マンションのチラシが厚紙だった。
郵便受けを開けたら、他のチラシに混ざって厚い紙が入っていた。大きさはA4、厚みは郵便ハガキを2枚重ねたくらい。
厚紙チラシ曰く、新築のマンションの最上階が、あと1戸で埋まるという。「さらなる高みへ」と、両面カラーで訴えている。
それにしても厚い。他のチラシよりはるかに目立つ。ボスみたいだ。こうやって目立つのが狙いなのだろう。
まさにチラシも2Dから3Dの時代だ。じゃぁうちも厚くしよう、うちもうちも、と、これからどんどん厚くなっていくかもしれない。
他よりも厚く、他よりも硬く、とエスカレートしていくチラシ。しかしそれも限界がある。なにより重い。配るのが大変。
となると、次は形だろう。他と同じA4では目立たない。B3だ、A3だとどんどん大きくなる。厚いままだから、ポストからはみ出る。
留守の家があると、どんどんチラシがたまっていく。チラシの上にチラシ。チラシの上にチラシ。
空へ伸びていくチラシの橋。夕日に照らされて虹色に輝く。
やがてその橋は、マンションの最上階へ届く。あと1戸が埋まらない、あのマンションの最上階。部屋に降りそそぐはずの陽光が、橋にさえぎられる。
「最上階なのに、ずいぶん暗いんですね…」
さらなる高みへ。その言葉が皮肉に響く。