防犯ブザーも”知らない人に気をつけろ”も役に立たない!「犯罪は予測できる」

現在の防犯の常識は「間抜けな犯罪者」を元にできている。

と言ったら言い過ぎかなぁ。しかしこの本を読むとそんな気がしてくる。

本書によると、ここ数年の検挙率は三割。認知された犯罪の、残り七割の犯人は捕まっていない。

そして、犯罪と認知されなければ捕まえる犯人は存在しない。2009年、警察が取り扱った変死体のうち、司法解剖に回されるのは全体の約一割だそうだ。

また、年間2000人が失踪宣告され、8万人が家出人捜索され、戸籍上存在しているが所在不明の高齢者は23万人もいる。行方不明の小中学生も1000人いる。

「バレてない犯罪」の数は少なくない。

じゃぁどうやって犯罪を未然に防ぐのか。その解の一つが、本書が教えてくれる「犯罪機会論」だ。

「入りやすく」「見えにくい」場所が危ない

捕まっていない犯罪者には共通点がある。犯罪が成功しそうな場所でしか犯罪を行わないのだ。さらに分析していくと、その特徴は二つ。「入りやすい」「見えにくい」

体育館の裏にある学校の裏門、幹線道路から少し入った道、立体駐車場の屋上、人通りの少ないトンネル、スーパーの「だれでもトイレ」

どれも入りやすくて、かつ、周囲から見えにくい場所。これらの場所、実際に殺人や誘拐が起きてます。聞いたことある事件ばっかり。そこも解説あり。

この考え方を基本にして、いまの日本の防犯について、アッと声が出る指摘をドンドンしていく。

・本当の不審者はマスクやサングラスをしていない
・騙されてついていく子供は防犯ブザーを鳴らそうと思わない
・バレないと思っている犯人は防犯カメラを気にしない
・犯人だって暗闇は不利なので街灯があるところを好む
・「知らない人に気をつけて」と言っても、子供にとって二言三言交わした人はもう「知ってる人」になる。

ほんの一部ですが、特に子を持つ親御さんにとっては背筋が寒くなる話だと思います。じゃぁどうしたらいいのよ!

「入りにくく」「見えやすい」場所にしてしまう

もちろん危険を唱えるだけでは終わりません。大事なのは犯罪を予測した上での予防。「入りやすく」「見えにくい」場所が危険なら、逆をつけばいい。「入りにくく」「見えやすい」場所にしてしまえばいいのだ。

いくつも具体的な対策が提案されていて、その中の一つが「地域安全マップ」。実際に大人や子供が地域を回って、「入りやすく」「見えにくい」危ない場所のマップを作るというもの。

実際に見て回ることで、こういうところが危険だとわかる。地域の人と話すことでコミュニケーションが生まれる。この場所を改善しようとする動きがでる。

そしてなにより、危ない場所を察知する「景色読解力」が子供に身につく。この近道いつも通ってたけど危ないんだな、みたいに子供に気づきが生まれるそうだ。

バレてない犯罪者は、家の近くにひっそりいるかもしれない。「気をつけよう」という精神論じゃなく、データに基づいてしっかりと犯罪を行う機会を潰す。犯罪機会論、もっと広まってほしいなぁ。

いつも行ってる公園も、実は危ない場所だったりする。親御さんは是非一度読んでおいたほうがいい一冊です。