『機械男』と<美脚>と「トランスヒューマニズム」

もともと読書感想文がメインだったこのブログ、近ごろiPhoneの話ばっかり書いてしまってますが、本も読んでますよー。

最近読んだのがこれ、『機械男』です。

「電車男」みたいなタイトルだけど、原題が「Machine Man」なんだからしょうがない。

主人公のチャールズはいわゆる”ギーク”な技術者。人付き合いが超苦手。機械しか愛せない。だって人間って非論理的だし。

そのチャールズ、職場で携帯を探しているうちに万力に足を挟まれてしまう。片足切断の大事故。病室で意気消沈するチャールズの元に、ローラという女子が義肢装具士としてやってくる。ローラが持ってきた義足をあれこれと試してみるものの、そのローテクぶりに逆にビックリする。GPSつけたりすればナビとかできるのになぁ。

思いついたら止まらないチャールズ。とりあえずの義足を付けて職場に復帰すると、自分の研究室で新しい義足を作りはじめる。バッテリーを積み、プロセッサを搭載して車輪を制御して、Wi-Fiもつけて…。

そうしてできた高性能の足。ローラにも大好評。お気に入り過ぎて<美脚>と命名。いやーいいなぁこの美脚。それに比べて、残っているこの生身の足ときたら…!

…読者の嫌な予感の通り、もう片方の足も切断してしまうチャールズ。しかしここから事態が急転。<美脚>の可能性に目をつけた会社側が、新規プロジェクトとして立ち上げ、人間のパーツを「ベター」なものにしようとして…。

「論理」と「非論理」のせめぎあい

実は本書、すでに映画化が決定している。監督は『ブラック・スワン』や『レスラー』のダーレン・アロノフスキー。体の一部が機械と化した人間が突っ走るので、『トランスフォーマー』とか『アイアンマン』とか、SFXバリバリになりそうなんだけど、そっち方面じゃない。

それはこの話が、機械になっていく男子と、彼を愛おしく想う女子の、少しねじれた愛の物語でもあるからだと思う。読んでる最中は入り込んでるので感じなかったけど、今思うと、ちょっと狂気ですらある。ダメだよ自分で足切断しちゃ。

チャールズは「論理的」を好んで機械化を望むんだけど、彼女への好意という「非論理」が大きくなっていく。

後半はアクション満載(!)な展開なんだけど、この「論理」と「非論理」のせめぎあいが見どころでもある。

その辺が映画にも反映されるのかなぁ、とも思うのです。

仮想を実現する「トランスヒューマニズム」

『機械男』には<美脚>の他に、目が良くなるコンタクトレンズ(ズーム機能まである)とか、体に貼るだけで肌がキレイになるパッチ、なんても出てくる。人間の「機能」を機械によってどんどん良くしようとする。

これ、お話の中のことなのかな、と思ったら、実際に「トランスヒューマニズム」って思想があるんですよ。

トランスヒューマニズム(英: Transhumanism、省略して>HやH+と書かれる場合もある、超人間主義などと訳される)は、新しい科学技術を用い、人間の身体と認知能力を進化させ、人間の状況を前例の無い形で向上させようという思想である。また、トランスヒューマニズムは人間の機能拡張やその他将来の科学技術の開発・使用により、将来起こりうることを研究する学問でもある。
トランスヒューマニズム – Wikipedia

H+ って!と思いつつ、なんとなく気にしていたら、そんな感じのニュースも出ていることに気づくわけで。

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「望遠コンタクトレンズ」なんて、まさにお話に出てきたやつですよ。ほ、ホントにできるんだ。

いつか冗談じゃなく、『機械男』の世界が現実になるかもしれませんね。