【書評】『レイヤー化する世界』で『ナリワイをつくる』

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photo credit: rickz via photopin cc

たまたま似たテーマを違う切り口から語る本を2冊読んだので、感想文をつなげて書いてみようと思います。

どちらも、いま当たり前と思っている社会をスライスして、断面を「ほら」と見せててくれる本です。

レイヤー化する世界

『レイヤー化する世界』は、ジャーナリスト佐々木俊尚さんの最新刊。コンピュータの普及による「第三の産業革命」が世界になにをもたらすかを、膨大な文献を元に描きだします。

↑ 佐々木さんの奥さんが手がけた、Kindle版の表紙の方が好きだなぁ。

未来のことを語るのかな…と思わせて、まずは今の世界のシステムを語るために、昔の世界のシステムがどうったのか、歴史を振り返るところから始まる。ローマやイスラムなど、多くの帝国が治めていた中世に。そして大戦以前の近代に。本書の半分近くがこの世界史に費やされる。

世界史と言っても、偉人も年号もほとんど出てこない。語られるのは歴史の中の「人と富の流れ」。

ターゲットを若い人に設定してて、丁寧にわかりやすく説明していくれる。僕、高校のときは世界史を取ってたんですけど「そうだったんだ!」の連続。全然わかってなかったですよ。

多数の民族を抱えていた「帝国」から、一つの民族が一つの国を作る「国家」へ、どのように世界のシステムが変化していったのか、スルスルと頭に入ってくる。

そして世界史が終わり、未来の話に。ここで、なんでこんな回り道をしたかがわかる。「第三の産業革命」により、国家から「帝国」に世界が戻っていく、と論じるためなのだ。

GoogleやApple、Amazonなど国境を超えた企業が多く現れてきた。その企業が作る<場>では、多数の民族が国境を超えてひしめく。そこには先進国も途上国も関係ない。むしろ、先進国の富が途上国に流れていく。フラットになる。

そんな時代を迎えるにあたり、大事になってくるは、自分が属する<レイヤー>。

会社の肩書きだけでなく、家庭、趣味、地域など、様々な場でそれぞれのつながりが必要になる。

<レイヤー>を多く持てば、モンタージュ写真のパーツが増えるように、未来の選択肢が増えていくのだ。

僕がどうしても気になる2つのこと

『レイヤー化する世界』は世界史から現代、未来までをスルスルとつなげ、とても刺激的で面白い本。これを読んでるか読んでないかで、未来の捉え方が変わってくるですよ。

でも、僕はここで描かれる未来に、気になることが2つあるんです。

1つは、「グローバル化」

富がフラットになり、テクノロジーが国境を超えた<場>を支配したとする。そこで残っていくためには…となると「グローバル化」が叫ばれる。

国境を超えて<レイヤー>でつながりあった人とチームを組んだり…ということになると思う。英語ができるかどうか…もそうだけど、戦う、奪い合う、というのがどうも性に合わない。ご近所レベルでなんとかなったりしないのかな。

もう1つは、「エネルギー」

震災後、原子力発電所が停止し、代替エネルギーを求め、深刻なエネルギー不足とまで言われた。

テクノロジーが<場>を作るためには、そもそも電気が必要。でも電気がないところだってたくさんある。「電気がないと何もできない人」になるのが怖い(※過去記事:「電気がなければただの猿」にならないために

この2つの気になるところの、一つの答えとなるのが『ナリワイをつくる』というこちらの本。

ナリワイをつくる

『ナリワイをつくる』は、DIYやアイデアを駆使して「ナリワイ」をつくる方法論を説明してくれる。著者の伊藤さんが自ら、DIYやアイデアを駆使してナリワイを作っているのだ。

伊藤さんが言う「ナリワイ」の定義は、「人の役に立つと同時に自分の頭と体を鍛える」こと。

じゃまなブロック塀をハンマーで壊す、ワークショップを開いて床を張る、年に1,2回モンゴルツアーを企画する、廃校の小学校で結婚式をプロデュースする…。

伊藤さん自ら、世界と戦わない「非バトルタイプ」を自称するだけあって、ナリワイは他の稼業と戦わないよう工夫されている。

プロがやってる仕事でも、採算が合わなかったり、細かい対応ができなかったりするものがある。その隙間に入り込む。入り込んでやってみると、自分の「できること」が増える。「知ってる人」も増える。そしてまた別のこともできるようになる。

お金を使って豊かになったりとか、頑張って成功したりとかは、そりゃそうなるのは当たり前なので、少ない力でできるよう工夫したい、と伊藤さんは言う。あまりにあっけらかんと書いてあるので素通りしそうだけど、すごい境地だ。心身すり減らして「当たり前」を実現するの、アホらしくなってくるなぁ。

『レイヤー化する世界』の言葉を当てはめれば、伊藤さんは複数の「ナリワイ」レイヤーを持っている。でもそのレイヤーは世界サイズというより、地域サイズ。こんな大きさのレイヤーもあるのだ。

「共犯」と「共存」

『レイヤー化する世界』には「テクノロジーとの共犯関係が始まる」という副題がついている。

テクノロジーは政府と違って、使っている人を支配する側に回る。保証とかない。だったらこっちも利用できるだけ利用してやろう、というのが「共犯」という言葉になっている。

一方、『ナリワイをつくる』は、「人の役に立つと同時に自分の頭と体を鍛える」が使命なので、どちらかと言えば与える側にいる。こちらは世界と「共存」していく。

「共犯」と「共存」。意味は違えど、どちらも「共」という字が入る。共に。ともに。

一人では生きづらい世の中で、大切なのは誰かと共にいることなんだろうなぁ。

2冊ともオススメですよー。

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