『チェンジング・ブルー―気候変動の謎に迫る』

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本書は「1974年の冬、アメリカ北東部はとりわけ寒さが厳しかった」というプロローグで始まる。

その年の科学誌には「寒冷化しつつある地球」「次の氷河期がやってくる?」という見出しが踊った。過去30年にわたって地球上のあちこちで気温が低下してるとか、氷河が前進しているとか、データも並べれていた。これからすごい寒くなるぞ!と言われてた。

でもいまは全然ちがう。全く逆の「地球温暖化」が問題になっている。あれ?寒くなるんじゃないの。

このことについて、著者の大河内さんは言う。地球の気候変動を知るには数十年のデータでは足りないこと。過去に起きた気候変動を知らずして、いまの気候を知ることはできないということ。

じゃぁ「過去」ってどれくらい昔なの?というと、なんと100万年前(!)までさかのぼる。何を調べたらそんな前の天気がわかるんだ!

この本は、気候変動の解明のために生涯をささげた科学者を描き、詳細なデータで事実を伝える、大興奮のノンフィクション。理系の子は手汗でビチョビチョになるよ!

成毛さんの『面白い本』(→ブックレビュー)で紹介されていた1冊。本文は350Pぐらい。そこにグラフや科学式があちこちに散りばめられている。かと思えば、科学者の写真も入っている。

難しい理論の説明ばっかりじゃなくて、それを発見した偉大な科学者たちのリスペクトに溢れてるんですよ。とあるデータに気がついて、それを追求して追求して、大きな発見をする、そのワクワク感が伝わってくる。この人とこの人は研究室が隣だったとか、死の間際に自説の正しさを証明する論文が若手から届くとか、偶然と必然が織りなす科学者たちの生き様のドラマチックなこと!

そしてなんといっても白眉は、何万年も前の気候を調べることによってわかった、数々の驚きの事実。

例えば北欧。バルト海北部、フィンランド一帯は年々数センチずつ地面が盛り上がってきている。火山活動など見られないのになぜ?

答えは「氷床」。10万年前~2万年前、イギリス北部から北欧、ロシア北岸は巨大な「北ヨーロッパ氷床」に覆われていたことがわかっている。その厚さ、3キロメートル。この巨大な氷床が無くなったため、陸地が重さから開放され、ゆっくりゆっくり「元の位置」に戻ろうとしているらしい。

じゃぁその巨大な氷が無くなったのはなんで?やっぱり地球温暖化?二酸化炭素のせい?と結論を急ぐのはまだ早い。2万年前に動物が吐いてる二酸化炭素などたかが知れてるのである。ディーゼル車とかないし。2万年前。

いまの気候で暮らせているのは「奇跡」

この謎を解く1つのカギが、地球の自転と公転の「ブレ」。地球は太陽の周りを回ってるわけだけど、その軌道は完全な円じゃなくて、ちょっぴり楕円形になっている。そして太陽はその楕円の中心に…いるわけではなくて、中心からちょっと離れたところにいる。つまり、1年のうちで「太陽に一番近い日」と「太陽から一番遠い日」が実はある(夏至と冬至でしょ、と思うでしょ?違う日なんですよー)

で、地球も自分で回ってるわけだけど、ご存知のとおり軸がちょっと傾いている。23.4度。でもこの軸、数万年単位でブレが起きている。コマって、止まりそうになると軸が傾いてきて、軸の上下が円になるじゃないですか。鼓みたいな形。あんな風になってるんですって。え!地球止まるの!ってわけじゃなくて、ブレの周期が数万年なんだっているから、なんともスケールの大きな話。

この公転のブレと自転のブレがちょうど重なると、「太陽にすごく近い白夜の日」ができちゃう。暑すぎ。で、この「ちょうどの日」は一回きりじゃなくて何万年に一度ある。さらに調べてみると、気候の変動とこのブレの時期がピッタリ一致しちゃう。

すごい話だなー!と感心するんですけど、これでまだ4章です。全部で13章あります。

二酸化炭素の登場、南極の氷を掘る探検、有能な科学者が集められた「マンハッタン計画」、数十年で気候が激変する可能性……なんどもなんども山場がやってくる。僕らがいま暮らしている「ちょうどいい気候」は、本当に奇跡的に生まれ、保たれていることがわかります。何万年に一度のことですよ。

桜前線が来るとか、梅雨に入るとか、毎年同じように四季がやってくることにただただ、感謝するのみ。

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