【本】『人を助けるすんごい仕組み』この奇跡は魔術ではなく、学術だ。

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「ふんばろう東日本支援プロジェクト」という復興支援プロジェクトがある。

プロジェクトを立ち上げたのは、この本の著者の西條さん。

ボランティア経験ゼロだった西條さんがはじめた「ふんばろう」は、いまでは日本最大級の支援組織になっている。

そのマジックには、ある「タネ」があった。

帽子から鳩が出るように

西條さんの本業は早稲田大学の講師。「構造構成主義」を提唱する研究者。

東日本大震災が起きるまで、ボランティア経験ゼロだった西條さん。実家が仙台であり、震災でおじさんを亡くされ、「ふんばろう」を立ち上げる。

ボランティア経験ゼロなのに、数々のプロジェクトを立ち上げ、いくつもの難題に立ち向かう。

あ、立ち向かうっていうのとは違うな…。スマートに切り抜けるんですよ。「方法」そのものを作って解決してしまう。まるで帽子から鳩が出るように、不可能を可能にするアイデアを出してしまう。

たとえば自宅避難している人たちに家電を送ろう、というプロジェクトがある。

ちょっと考えただけでハードルたくさんなんですよ。自宅避難している人は避難所にいないのでリストがない。どこにどれだけ送る?そもそも家電をどうやって集める?たくさんの家電が本当に動くかどうやってチェックする?

その辺りのことは『ほぼ日刊イトイ新聞』で素晴らしいインタビューがあるので、そちらを御覧ください。もう僕が言うこと、ないです(笑)

この本でも第5章に「西條剛央さんの、すんごいアイディア」が再編され掲載されています。それまでの第1章~第4章は「ふんばろう」立ち上げの西條さんの体験談で、第5章で一旦総括する構成になっています。

ほぼ日刊イトイ新聞 – 西條剛央さんの、すんごいアイディア。
ほぼ日刊イトイ新聞 – 西條剛央さんのその後とこれから。

「目的」と「状況」

帽子から鳩を出すにはタネがあるように、西條さんからアイデアが生まれるのにも「タネ」がある。

西條さんが研究していた「構造構成主義」は「何が起きても柔軟に対応できる型」に関する学問。方法を生み出す原理、考えかたを追求していた。だから今回のような未曾有の災害に対しても「型」をはめることができた。これが「タネ」だった。

後半の第6章~第8章では「タネ」を丁寧に明かしながら、組織の運営について秘訣や提言をしてくれる。

これってつまり、ちまたに溢れる「問題解決」や「組織論」とかの、まさに根っこの部分の話。この「タネ」を押さえれば、どこでも応用が効く。すごい話を聞いちゃった、とドキドキする。

この本で何度も出てくる「方法の原理」がドキドキの1つなんです。『方法の有効性は(1)状況 と(2)目的から規定される』という原理。どういう状況で、なにを目的にしているのか。この2つをハッキリさせてから、方法というのは決まるのだ、ということ。

言われてみれば当たり前の気もするけど、徹底された「方法の原理」は迷わず物事を決める強力なツールになる。

不安を抱えるプロジェクトも『「目的」は失敗することではなくて、効果的な支援を行うこと』と決行する姿にしびれる。行政や大企業ではこんな踏み切りはできない。方法ありきではなく、「目的」「状況」を見極めてはじめて、本当に問題は解決されるのだ。

モチベーションがすべて

まだしゃべりますけど、ボランティア組織の運営について書かれた「秘訣」も素晴らしいんですよ。

ボランティア組織は無給であり、気持ちで人が集まっている。これはボランティアだけじゃなくて、同人とか、イベントスタッフとか、「モチベーションがすべて」の集まりに共通すること。

そしてそれらの組織は「モチベーションがすべて」なので、モチベーションが下がったら分裂してしまう。人間関係の調整など、後ろ向きな作業が増えてしまう。

僕自身、ミステリファンの巨大オフ会「MYSCON」のスタッフだったこともあり、このモチベーションの話はいろんなことを思い出した。

「クジラではなく小魚の群れを目指す」「反省会をしない」「投票や多数決をしない」「感謝を忘れたとき、組織は崩壊する」「トラブルを減らすための7ヶ条」など、あのころ聞きたかった話がたくさん…。

「気持ちで集まっている人たち」のバイブルになると思う。

「意志が未来を切り拓き、未来が過去を意味づける」

震災のレポートであり、問題解決の解説書であり、組織のバイブルでもある、この『人を助けるすんごい仕組み』。

震災から2年が経ち、「ふんばろう」のプロジェクトも長期戦の構えとなっている。仕事、心、人のケア。今もたくさんのプロジェクトが進行している。ミシンでお仕事をするお母さん。子供たちへの学習支援。

被災地外の人たちは、いまも「なにかできることはないだろうか」と思っている。節目をむかえて「なにもしてこなかった…」「いまさら自分にできることなど…」と伏し目がちになっている人も多いと思う。僕もその1人だ。

でも先は、まだまだ長い。今から出番が回ってくる人だっている。

この本には「意志が未来を切り拓き、未来が過去を意味づける」という言葉が出てくる。未来が光るものになれば、つらかった過去も「あれがあったから」と意味を持つ。

どうか、その顔をあげて。未来はいつでも前にある。

ふんばろう東日本支援プロジェクト

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2件のコメント

    1. ご指摘ありがとうございます……!
      訂正いたしました……失礼いたしました……。

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