この中に、ローマ法王がいる

st. peter's cathedral - chicago, il - 無料写真検索fotoq
photo by james_clear

「おい、いま扉を閉めたのは誰だ?」
「俺じゃない」
「ちょっと見てくる」
「なんだろうな」
「大変だ、扉が開かない!」
「なんだって!?」
「貸せ…クソッ、ノブが回らない」
「外に連絡しよう。開けてもらえばいい」
「ケータイが圏外だ…」
「僕のケータイも…」
「閉じ込められたってこと!?」
「そんなバカな!」
「みんな!みんな、ちょっといいか」
「どうした」
「なんだこんな時に」
「いいか、落ち着いて聞いてくれ……」
「……」
「ローマ法王は……この中にいる」
「……なん……だって?」
「そうとしか考えられないんだ」
「馬鹿なこと言うな!ローマ法王は外にいたじゃないか」
「あれはローマ法王じゃない。いや、正確には、ローマ法王だったもの、だ」
「!?」
「ローマ法王は外部にはいない。ならば内部にいる。単純なことだよ。俺たちの中に、ローマ法王がいるんだ」
「そんな……!」
「クソッ……!ローマ法王なんかと一緒にいられるか!俺は部屋に戻るからな!」
「待て!」
「放っておけ」
「でも……」
「一応聞いておく。この中で、自分がローマ法王だという者は名乗り出てほしい」
「……」
「……」
「……誰も名乗り出ないか。予想はしていたが、仕方ない」
「どうするんだ……?」
「投票で決めよう」
「投票……?」
「ハッ、民主主義で決めようっていうのか?ローマ法王を?」
「一番票を集めた者をローマ法王(仮)とするんだ。そいつを朝まで監視すれば、取り急ぎ問題は起きないんじゃないか」
「そいつがローマ法王じゃなかったら、どうするんだ」
「みんなで決めた結果が外れたんだから連帯責任だ。どうなるかは……明日の朝わかることさ」
「……」
「さぁ、ここにメモ用紙がある。この中で、ローマ法王だと思う人物の名前を書いてほしい」

〜〜〜〜〜

「警部」
「なんだ」
「また…黒煙です」
「なかなか決まらないようだな」
「そうですね」
「まさに、彼らと我々の、根比べといったところだな」
「……」
「……」
「警部」
「なんだ」
「ドヤ顔やめてください」
「悪かったな」

※コンクラーベ 初日は新法王選ばれず NHKニュース