【本】『中の人などいない @NHK広報のツイートはなぜユルい?』

今や50万人のフォロワーを持つ、NHK広報(@NHK_PR)NHK_PR1号さんの単行本。

まえがきにある、この本を出すキッカケとなった出来事から面白い。

公式アカウントとしてTwitterをやるようになって1年。企業向けのTwitter活用セミナーに参加したNHK_PR1号さん。そこで資料として渡されたのが、なんとNHK広報局のツイート。何も知らない講師は「今からこのツイートを丸裸にします」と本人を前に堂々の脱衣宣言。いやん!

それから2時間かけて自分のツイートを丁寧に解説されるNHK_PR1号さん。

話を聞き終わり、一番驚いたのが「ソーシャルメディアの専門家にも自分のツイートの意図が伝わっていない」こと。

全く見当違いの解説をされてしまった。ゆるいツイートをしているには理由があるし、「中の人などいない」はギャグでもなんでもない。これはいけない、この誤解はちゃんと解かなければ!

本当に、中の人などいない、のだと。

話はNHK_PR1号さんがこっそりTwitterアカウントを取得するところからはじまる。

お固いイメージのNHKをもっと身近に感じてもらうため「組織に人格を持たせよう」と考える。番組告知とか特にせず、会話を楽しむアカウントにしたい。人格を考えたほうがいいな、生協の白石さんみたいにウイットに富んだ回答ができて、のだめちゃんみたいに天然で…。

こうしてNHKなのに「ゆる~いツイート」をする公式アカウントNHK_PRが誕生する。日付を間違えたりもする。修造botと真面目に会話したりする。つぶやくネタがなくなってきたので「今日の自分が気になる番組」を告知ツイートし始める。他局の公式アカウントと交流する…。

正直は最大の戦略

ゆる~いことばかりじゃなくて、公式アカウントとして心がけてる事も書いてある。

NHK_PR1号さんは出張があるとツイートが止まる。これは「携帯からツイートしないこと」をポリシーとしているから。携帯はPCよりも感情が表に出やすくなるため、基本的にツイートは自席のPCから行うことにしているとのこと。ツイートをする場所なんて、考えたことなかったなぁ。

もう1つ、「Twitterばかりが世間ではない」というのもNHK_PR1号さんがTwitterをしていて学んだこと。

宇宙探査船はやぶさが帰還する日、NHKは生中継の用意がなかった。続々と@NHK_PRに「はやぶさを中継して!」と要望が来て、日本中がはやぶさに注目している!とアワアワしたものの、実際は多くの人がワールドカップの中継を観ていた。要望が来ても、落ち着いてタイムラインを観察するようにした、とのこと。

通じて言えるのは、Twitterに使われない、ということだと思う。

「Twitterを使う広報」が目的ではない。フォロワーさんに何を伝えて、どんな会話をしよう、というのがあくまでメイン。フォロワーさんを信頼し、本質を見失わないようにする。

この辺、糸井重里『インターネット的』(→レビュー)にもあった「正直は最大の戦略」という言葉を思い出す。

NHK_PR1号さんはとても正直なのだ。ミスもする。炎上もする。でも自分の想いにとても正直なのだ。そして正直な人の周りには人が集まるのだ。

人間味に溢れながら、正直にフォロワーさんに向かう姿はとてもカッコいい。

で、最近どんなことをつぶやいているかと言えば、

やっぱりゆるいなぁ~。