『BORN TO RUN 走るために生まれた~ウルトラランナーVS人類最強の”走る民族”』

2013-02-27 10.43.02

食い入るように読んだ。これ、ホントにノンフィクションなのか…!?

メキシコの奥地にいる”走る民族”のヒミツ、100キロを越える「ウルトラマラソン」を走るランナーたち、人間の足に秘められた力、そしてタラマウラ族とウルトラランナーのレース…!

読んでる最中も、読み終わった後も、何度も走りに出かけてしまった。

著者のクリストファーさんが足を痛めたのは2001年。当時は身長193センチ104キロとかなりの巨漢。医者には注射や矯正具、最新のランニングシューズを勧められ、走ることは身体に毒だと諭される。

そんなとき、メキシコの奥地にいる「走る民族」タラマウラ族のことを知る。彼らは一晩中トウモロコシのビールでパーティをして、翌朝ふらりとレースを始める。そのレース、丸2日走りっぱなし。500キロの山道をサンダル履きで走りぬく。日頃トレーニングはしないし、ストレッチも準備運動すらもしない。

なんで同じ人間なのに、こっちは足が痛くって、彼らはそんなに走れるのだ?

ここからクリストファーさんの冒険がはじまる。

構成はランニングに似てる

最初はちょっと読みにくい。話があちこち脱線しちゃうのだ。

この本、メインとなる話は3つある。

1.メキシコまで出かけ、史上最強の”走る民族”タラマウラ族の秘術を探る旅
2.人間の身体はもともと長距離を走るようにできてることを、人類学的・科学的に解明
3.アメリカのウルトラランナー7人とタラマウラ族が、メキシコの荒野で大激突

ここにウルトラマラソンの歴史や、ウルトラランナーたちのエピソードなどが入り組んで語られる。最初はとまどうけど、それはランニングと同じで、ウォームアップさえ終わればゴールまで走り抜けてしまうオモシロさなのだ。

「超人」たちの宴

「ウルトラランナー」と「タラマウラ族」という超人たちが出てくるんですけど、この人達、良く言えば個性的、悪く言えば奇人変人。大変なことになってる。

ウルトラランナーのエピソードは飛び抜けていて、毎日ふらっとフルマラソンくらいの距離を走っちゃったり(しかも「疲れがとれた」と夜にもう1回走る)、全裸で森の中を走ってたり(女性!)、裸足で峡谷を軽々飛ばしたりする。100キロ以上を24時間かけて走る人なんて、やっぱりどこか変わってる。

対してタラマウラ族は物静か極まりない。よそ者への警戒心が強く、まず人前に表れない。走っているあいだは苦しがらず、笑って冗談を飛ばし合ってる。標高2000メートルくらいの山をぶっ飛ばしながら。

こんな「超人」たちを凡人の著者から書いていて、後半のウルトラランナーVSタラマウラ族なんて、まるで映画を観ているよう。でも絵空事じゃなくて、これノンフィクションなんだよなぁ。

なんだか自分も走れるんじゃないか?という気になってくる(でも実際走ってみて「ちがうわ」と思ったりする)

タラマウラ族のヒミツ

ウルトラランナーの奇人ぶりも目立つけど、人間は走るために生まれた、というお話も興味深い。

まだホモ・サピエンスだったころ、狩りをするのに、まぁイメージとしてはヤリみたいなの持って動物を追っかけてる感じするじゃないですか。

でもね、そうじゃないんですって、動物が疲れて倒れるまで、一緒にずっと走ってたんですって。3~5時間くらい。そんな猟あるの。

知能が高く腕力もあったネアンデルタール人より、長距離を走る能力があったホモ・サピエンスが生き残ったのだ、という説が語られる。

じゃぁなんで今のランナーたちは怪我しちゃうの、という疑問を突き詰めると、「ランニングシューズが身体に悪い」というとこまで行きつく。裸足がベストの状態。そしてタラマウラ族も、薄いサンダルでペタペタ走って怪我しない。これがわかってから、クリストファーさんも足の怪我が良くなっていく。
(そういえば『非常識マラソンメソッド』(→レビュー)でも「初心者でも薄底シューズ」って言ってた)

それと、もうひとつヒミツがある。

タラマウラ族が笑いあいながら走ってる姿を見て、ランニングを専門とする学者が天啓をうける場面がある。

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「愛」

他の人を蹴落として上がっていくのがランニングじゃない。走ること自体が楽しくて楽しくて、ハッピーだから、ずっと走り続けられる。ウルトラランナーも、タラマウラ族も。

これ、僕がハーフマラソンを走ったときも感じたことなんですよ(→21キロ走って初めてわかったこと 〜神奈川マラソンで走ってきました | イノミス)苦しい時に、なにくそ!とか負けるか!とか負のエネルギーを出しても足は動かないの。沿道の人とハイタッチしたりして嬉しい!楽しい!と思うと力が湧いてくるの。不思議。

ハッピーがあふれる、ウルトラランナーvsタラマウラ族の50マイルのレース。とても爽やかな読後感で、こっちまでハッピーをもらう。

あぁ、ここまで書いてたらまた走りたくなってきたー。

では、ここで失礼。