いまさら読んであまりの面白さに転げまわった!横溝正史『獄門島』

「東西ミステリーベスト100」でも1位に輝いたミステリーの金字塔、横溝正史『獄門島』。

このブログ「イノミス」は、手打ちでHTMLを打ってた時代から、もう10年以上ミステリを読んでは感想を書いてきたんです。でも実は『獄門島』を読んだことがなかったのです…。

というか、横溝正史自体、全然読んでないんです。なんかこう、呪い的なやつとか、因習とか、家系のドロドロしたやつとか、ちょっと苦手だなぁと思っていたんです。古典を追うのはいつでもできると、後回しにしていたんです。湖から足が出てるやつでしょ?と『犬神家の一族』とごっちゃに覚えてたんです。

でもこれではいかんと。いつでも読めると思っちゃいかんと。読んでみたわけです。

そしたらですよ。いや、あの、ほんとね、

めちゃくちゃ面白いんですよー!

取り乱しました(帽子をなおしながら)

あらすじはAmazonさんから引用させてください。

獄門島――
江戸三百年を通じて流刑の地とされてきたこの島へ金田一耕助が渡ったのは、復員船の中で死んだ戦友、鬼頭千万太に遺言を託されたためであった。『三人の妹たちが殺される……おれの代わりに獄門島へ行ってくれ……』
瀬戸内海に浮かぶ小島で網元として君臨する鬼頭家を訪れた金田一は、美しいが、どこか尋常でない三姉妹に会った。だが、その後、遺言通り悪夢のような連続殺人事件が!
トリックを象徴する芭蕉の俳句。後世の推理作家に多大な影響を与え、今なお燦然と輝く、ミステリーの金字塔! !

獄門島は漁業で暮らしている島。「網元」というのは漁に欠かせない網を所有しているので、漁師の中でも一番偉い存在。なので網元の鬼頭家が島では一番力を持っている。

ただこの鬼頭家、本家と分家に別れている。あらすじにある三姉妹は本家側にいる。分家は本家と対立をしていて、いつか倒そうと思っている。島の外から美青年を連れてきて、本家の三姉妹を誘惑してたりする。

この本家と分家は、山の中腹に背中合わせで建っている。その山のてっぺんにお寺がある。漁師は死と隣り合わせの職業なので信仰が厚い。自然、寺の住職の発言力は強くなる。

この本家・分家・寺のトライアングルに加えて、島の外には海賊が出没してたりする。人間関係が複雑なんだけど、まずこのトライアングルを頭に入れれば問題ない。こういうドロドロは苦手…と思っていたけど、建物の立地と権力関係がリンクしているので、視覚的にイメージしやすかった。

数々の謎が濃縮されてる美しさ

この状況で連続殺人が起きるわけです。殺人が起きるたび、死体には奇っ怪な装飾がほどこされている。なんでこんなことをするのか?誰がこんなことをしたのか?そもそもなんでこのタイミングで事件が起きるのか?

事件は複数あってそれぞれトリックが仕掛けられてるし、かなりの数の謎があるんですが、本編はそんなに長くない。文庫で350ページくらい。この長さでこの謎全てに決着をつけてるのがとてもスマート。犯人も動機も因果も全て絡み合い、濃縮されて、結晶のように美しい。

これ、同じ話がいま書かれたとしたら、もっとエピソードをいれたり謎解きを丁寧にしたりして、すごく長くなると思うんですよ。でも、金田一耕助は仮説を立てて緻密に考える、というよりも、考えてるうちに一本の道を見つけるようなヒラメキ型の探偵なので、このスマートさが実現できてる。

早く読めばよかった

事件の複雑さと謎解きの見事さに加え、鬼頭家を揺るがすドラマも眩暈がするほどの結末を向かえ、読み終われば今度は伏線を読み返して「そうだった!」とまた驚くという、これぞミステリーだという傑作。大傑作。今読んでも全然古くない。

早く読めばよかったー。すごいー。すごいしか言えない。筆舌に尽くしがたい。

老後の楽しみなんて言ってないで、読めるうちに読んでおいてよかった。他の横溝作品も読みます。人生に楽しみなことがまた増えた!とても嬉しい。

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