アジアから来た工作員

U.S. Army Fire Team - 無料写真検索fotoq
photo by Dunechaser

「失礼します」
「お前か」
「大佐」
「なんだ」
「あのアジアから来た工作員、Wのことなんですが」
「Wがどうかしたか?」
「自分にはどうしても解せません」
「なにがだ」
「Wが戦場で役立つとは到底思えないのです。工作員の意味を履き違えているのではないですか」
「どうしてそう思う」
「それは……」
「説明し辛いのはわかる。容姿、言動、成果物、どれを取っても戦地で活躍するとは想像できまいな」
「ならばなぜ」
「だが、Wは我が軍に必要な人材なんだ。ここからWの作業場が見える。集音スコープを貸してやるから、覗いてみるといい」
「はぁ……」

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「わくわくさん、今日はなにを作るの?」
「やぁ、ゴロリ。今日はこの、紙コップで兵隊さんを作るよ」
「わぁー、いろんな兵隊さんがいるー」
「それ!ガガガガガガーン!」
「やったなぁー、バキューン!バキューン!」
「うわぁ〜、や〜ら〜れ〜たぁ〜」

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「大佐」
「なんだ」
「解せません」
「そうか」
「『工作員』ってそういう意味じゃない」
「わかる」
「戦地に工作好きの素人を連れて行く気ですか」
「そう焦るな。もう少し覗いてみろ」
「はぁ……」

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「わくわくさん、今度はなにを作るの?」
「今度はねゴロリ、ここにあるもので、プラスチック爆弾を作るよ!」

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「!?」
「ようやくショーが始まったようだな」

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「わくわくさん、どうしてホチキスの針をまぜるの?」
「それはね、爆発した時により多くのダメージを敵に与えることができるからさ」
「なるほど〜」

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「大佐、これは…」
「見ての通りだ。Wは身の回りにあるもので殺傷能力の高い武器を作る能力を持つ」
「まさか、そんなことが…」
「戦地では資源が限られる。ゲリラ戦となればなおさらだ。そこでWに武器を作らせる。現地調達でな」
「Amazing…」
「まさに東洋の神秘さ」

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「わくわくさん、僕もプラスチック爆弾作りたいなぁ〜」
「はい、ゴロリくんの分もありますよ〜」
「わぁ〜い」

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「Wの特殊能力についてはわかりました。ただ、もう一点」
「……なんだ」
「Wは誰と話をしているんですか?」

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……わくわくさん……見て……街が火の海だ……
……これが戦争だよ、ゴロリ。よく見ておくんだ……
……僕たちは……とんでもないものを作ってしまったんだね……

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「集音スコープから声は拾えるのですが、Wの姿しか捉えられません。Wの口からはゴロリ、と聞こえましたが……」
「ゴロリ。Wのパートナーだよ。いや、パートナーだった、か」
「?」
「ここに連れてくる前、東の戦いで失ってしまったらしい。戦争のトラウマに耐えられなかったようだ」
「では、声の主は……」
「Wが一人でやっている。少々気味が悪いが、説明しながらでないと手が動かないようでな……」

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「できたぞゴロリ!さっそく最前線に出撃して試してみようー」
「わー、待ってよぉ、わくわくさーん!」