最初から言ってよ殺人事件

180/365 - Down To A Whisper

「…以上のことから、犯人は左利きだということが、おわかりいただけたと思います。イコール、この中で左利きの人物が犯人ということになります」
「先生」
「犯人は…」
「先生、先生」
「なに小林くん」
「ちょっといいですか」
「いま一番いいところなんだけど」
「大事な話が」
「しょうがないな……皆さん、ここを動かないでください……どうしたの」
「あの、左利きの人なんですけど」
「左利きは安藤さんしかいないって君から聞いたよ」
「もう1人いまして」
「うそ」
「竹中さんも左利きなんです」
「えー言ってよー」
「すいません」
「犯人は安藤さん、ってここまで出てたよ」
「すいません」
「どうしよ…んー…わかった、大丈夫」
「ホントですか」
「まあ任せなさい…皆さん、お待たせしました。左利きの人物、それは、安藤さんと竹中さんですね。つまり犯人は二人に絞られました。ここでアリバイを考えます。思い出してください。悲鳴が聞こえた時、大広間に居たのは…」
「先生」
「なに」
「お忙しいところすいません」
「超忙しいんだけど」
「大事な話が」
「やれやれ……皆さん、ここを動かないで。特にそこの二人……なんなの」
「事件のアリバイって、悲鳴が聞こえた時の」
「そうそう。あの悲鳴は犯人が作ったダミーだったでしょ」
「はい」
「だから、悲鳴が聞こえた時に大広間に居た人物、イコール、アリバイがある人物が、逆に犯人なわけで」
「それで、大広間に居たのは」
「僕と小林くんと安藤さんだったでしょ」
「竹中さんもいたんです」
「うそ」
「一緒に左利きトークをしてました」
「えー言ってよー」
「すいません」
「あの人、存在感なさすぎるでしょ」
「すいません」
「小林くんが謝ることじゃないけど…んー…わかった、大丈夫」
「ホントですか」
「任せなさい…皆さん、お待たせしました。えー、アリバイの話は、その、ちょっと置いておきまして。現場の状況を振り返ります。地震で書棚が倒れ、ドアが塞がれたのは犯人にとって想定外のアクシデントでした。書棚には犯人の目当てと思われる社長の日記がありました。しかし犯人は書棚をそのままにしておいた。犯人は書棚を動かさなかったのではありません。動かしたくても、動かせなかったのです。つまり…」
「先生」
「なんなの」
「お時間いただけますか」
「あげたくない」
「大事な話が」
「もう……皆さんそのままで。トイレ?安藤さん以外どうぞ……なによ」
「書棚を動かす話ですが」
「安藤さんは女だから動かせなかった、って言うよ。もう言うよ」
「竹中さんも女なんです」
「うそ」
「女子トイレで会いました」
「えー言ってよー」
「すいません」
「竹中さん僕より毛深いよ」
「でも女なんです」
「竹中さん若干分け目ハゲてるよ」
「でも女なんです」
「あぁそぅ……あれ」
「どうしました」
「小林くん、いま、竹中さんと『女子トイレで会いました』って言った?」
「はい」
「小林くん…女子なの?」
「はい」
「うそ」
「女子です」
「えー言ってよー」
「すいません」
「小林さんじゃん」
「すいません」
「あれ、悲鳴聞こえた時さ、大広間に居たよね」
「はい」
「竹中さんと左利きトークしてたって言ったよね」
「はい」
「もしかして小林さんって左利き?」
「はい」
「えー言ってよー」
「すいません」
「ってことは容疑者じゃん」
「はい」
「えー言ってよー」
「私がやりました」
「えー言ってよー」
「遊ぶ金欲しさに」
「えー言ってよー」
「痴情がもつれて」
「えー言ってよー」
「もうすぐ警察が」
「えー言ってよー」
「でも、逃げます」
「えー言ってよー」
「全部爆破します」
「えー言ってよー」
「…」
「えー言ってよー」
「…」
「えー言ってよー」
「ちっ、壊れたか」
「えー言ってよー」
「やっぱり安物のアンドロイドじゃ探偵役は勤まらないな」
「えー言ってよー」

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