3Dプリンタ殺人事件

この頃「3Dプリンタ」についての話をよく目にする。

3Dプリンタはその名の通り立体をプリントできるプリンタ。立体をプリント、ってなんか変な感じするけど、設計図を入れてやれば「モノ」ができあがる、という代物らしい。

家庭にもおけるくらいのお値段のやつがそろそろ来るぞとか、試作品を簡単に作れちゃうぞとか、モノづくりが個人レベルでできちゃう時代になるぞとか、いろいろ期待されている。

こういう新しいテクノロジーが出ると、推理小説はまた困るだろうなぁ、と思う。

あの「このドアの鍵は合鍵が作れないタイプ」が使えなくなっちゃうんじゃないだろうか。

「さて、みなさんにお集まりいただいたのは他でもありません。晶子さんの死の真相がわかりました」
「死の真相?晶子は自殺したんじゃないのか?」
「違います」
「部屋のドアには鍵がかかっていて、窓にはクレセント錠がおりてたじゃないか」
「これは…巧妙な密室殺人だったのです」
「なんだって!?」
「犯人はあらかじめドアの合鍵を作っていたのです」
「馬鹿な、部屋の鍵は晶子が身につけていた。そしてこの鍵は合鍵が作れないタイプだぞ。そんなことが…」
「できるんです」
「な…!?」
「犯人は3Dプリンタを使ったのです」
「3Dプリンタ!?」
「鍵の前後左右から写真を撮るんです。この4枚の写真を元に設計図を作り、3Dプリンタで鍵を出力したのです」
「そんなことが…」
「できるんです」
「じゃぁ…無くしたはずの晶子のイヤリングの片方が出てきたのは…」
「3Dプリンタです」
「飾り棚のインディアン人形が1体増えていたのは…」
「3Dプリンタです」
「冷蔵庫に入っていた晶子の首は…」
「3Dプリンタです」
「晶子は生きているか!?生きているなら会わせてくれ!あいつが…あいつがいないと俺は…俺は…」
「こちらを」
「その後ろ姿は…晶子!晶子なのか!俺が…俺が悪かった…借金なんか作ったりして…もう一度二人でやり直そう…!晶子…!こっちを向いてくれ…!」
「3Dプリンタです」
「なんだよ!」

推理小説は困っても、コントの幅は広がるかもしれません。