オムツゴロウとゆかいな子供たち 〜寝かしつけからの脱出〜

「『オムツゴロウとゆかいな子供たち』の時間です。解説はオムツゴロウさんこと、小畑正憲さんです。本日はよろしくお願いします」
「どうもどうも」
「これはベッドルームですね…。子供に母親が添い寝しています」
「お昼寝の時間ですね」
「子供の方はスヤスヤと寝息をたてていますが…おや、母親が少しずつ動いてませんか?」
「あれはですねぇ、母親が子供を起こさずにリビングに行こうとしてるんですねぇ」
「起こさずに」
「寝かしつけの時に子供に腕枕をしてあげて、そのまま寝られてしまったんですねぇ。このとき、子供は親に動かれると起きてしまうんです」
「そんなに敏感なんですか」
「寝ている子供にはたくさんのセンサーが働いていることが報告されてます」
「センサーといいますと?」
「抱っこのまま座ると立つように促す着座センサー、抱っこから布団に降ろそうとすると泣く高度センサーなどなど、実に様々な親の動きを感知するんですねぇ」
「なるほど…。そしていま母親はゆっくりと…非常にゆっくりと子供から離れようとしています」
「子供が寝ているうちに録画したアメトークを観たいんですねぇ」
「ここからは早送りで観てみましょう。あー、腕をぬいているのがわかりますね。肘の部分は特に慎重です。もう片方の手になにか持っているようですが?」
「クッションですねぇ」
「何に使うんでしょうか?」
「自分の腕がぬけたスペースに入れるんですねぇ。いわばダミーの腕というわけです」
「なるほど、腕がぬけると子供の頭が落ちてしまう」
「そういうことですねぇ。ちなみに上級者になると子供を起こさずに布団に着地させるようになります」
「まるでスパイ映画のような緊張感です…クッションを持ち替えました…腕をぬきながらもう一方の手で子供の頭をおさえて…いまクッションが…はいりました!…いよいよ母親が立ち上が…あっ」
「気がつかれましたねぇ」
「泣いています。寝ていたはずの子供が火がついたように泣いています」
「クッションの厚みが足りなかったんですねぇ」
「再び母親が寝かしつけの姿勢になってしまいました。これからどういう展開になるのでしょう?」
「最初からやり直しですねぇ」
「母親がスマホを取り出しました」
「長期戦を覚悟したようですねぇ」
「こちらもここで時間となりました。本日はたくさんの興味深いお話ありがとうございました」
「いえいえ」
「また次回お目にかかります。ごきげんよう」