ネガティブは「快楽」!? 小池龍之介『考えない練習』

「考えすぎる」脳をどうやってクールダウンさせるか?
 
イライラ・不安といった負の感情を、仏教の教えに照らしながら、どのように抑えて穏やかに過ごすかを説いた本。「話す」「聞く」「食べる」「育てる」など、人の動作ごとに章分けがされていて、それぞれの所作や考え方を具体的に述べている。
 

根っこにある問題は「心は常に刺激を求めて暴走する」ということ
 

人間、ボーッとしてててもなんかしてても、常にすごいスピードで色んなことを考えている。隣の人うるさいな、うるさいと言えばあいつ今どうしてるんだろ、うわ雨降ってるじゃん、いかんいかん仕事仕事…みたいに、一貫せずあっちこっちに思考が飛ぶ。

特にネガティブな考えは刺激が強いので、心が逆にネガティブを求めるようになってしまうと著者は言う。ネガティブな事を考えて一回心が凹んだとして、そこからいい事があると凹んだものが元に戻っただけなのに、「凸になった!」と勘違いしちゃう。こんなことを繰り返してると「ネガティブ=悦楽」になっちゃう。

確かに寝る前に良くないことをグルグル考えちゃう、ってのは寝床で他に刺激がないからそんなことになっちゃうわけだ。ほうほう。
 

その解決として「五感を使う」ことを提唱している。
 

話す時も自分の発する声を意識する。食べる時は舌の動きを。なんとなく眺めていたものをちゃんと見て、耳を済まし、触っているものを感じる。体からの情報を意識すると自然と「自分」を実感する。

ネガティブに陥りそうになった時は「あー、自分は今イライラしているなー」と自分を客観的に見る。この辺、以前読んだ「自分の小さな箱から脱出する方法」の『箱の外』の話に通じる。こうやって暴走する脳から自分を切り離すことで、穏やかさを保とうというわけ。
 

全体通して思考の捉え方・操り方に「なるほどなぁ」と思うところはあるのだけど、ただ最終的なゴールが何事にも動じないホントに冷静な人って感じなので、ちょっとそこまではなぁ…と尻込みする感じ。ネガティブ思考を救う、という面では有用だと思うけど、笑うのも煩悩なので良くないとか言われちゃうとちょっと…。

あと、巻末に脳研究者・池谷裕二との対談があるのだけど、どちらかというと池谷さんの話が面白くて興味を惹かれてしまいました(ペンを横に咥えて無理に笑顔を作ってみる実験とか、チベット出入り禁止の話とか) 自身の解釈を元に思考の操る僧侶と、実験とデータを元に研究をしている科学者との対談は、なんか「答え合わせ」をしているよう。池谷さんが小池さんに歩み寄るような感じが伺えて、双方にとってあまり幸せな対談じゃないなぁ…と感じてしまいました。

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