さて皆さん、大広間に集まってほしいんですけど

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『皆さん、大広間にお越しください。今回の事件の真相をご説明いたします』

「先生」
「なんだね」
「本当に、真相が全てわかったんですか…?僕にはさっぱり…」
「自明だよ。ここで幾つか確認すれば、解決に必要な手がかりは揃う。足跡の謎も、現場から左腕が持ち去られた理由も、そして犯人が誰かも、全て説明がつく」
「さすがですね先生…!犯人は、一体誰なんですか?」
「それは順を追って説明するよ。一つ一つの理由を明らかにして、ロジックを組み立てたプロセスを、ね」
「わかりました」
「ところで…」
「なんですか?」
「誰も来ないね」
「来ませんね」
「屋敷の人たちには伝えたんだよね?」
「はい、皆さんに伝えました。大広間にて先生からお話があると」
「もうちょっと待ってみようか」
「はい」


 

「来ないね」
「来ませんね」
「ちゃんと呼んだ?」
「呼びました」
「みんなまだ部屋にいるのかな」
「いえ、皆さん遊戯室で玉突きに興じてらっしゃいます」
「そうなの!?」
「はい」
「全員?」
「はい」
「執事の長谷川さんまで?」
「はい」
「主人が死んでるのに?」
「はい」
「ふーん…知らなかったな…」
「そうですか」
「あれ?知ってた?」
「はい。お誘いをうけたので…」
「あ、そう…」
「…」
「だいたいさ、被害者は心臓を一突きされたのに、みんなよく玉突きなんてできるよね」
「それとこれとは…」
「…」
「…」
「…来ないね」
「…来ませんね」
「申し訳ないけど、もう一回行ってきてくれる?」
「わかりました」
 

「言ってきた?」
「言ってきましたが…」
「が?」
「探偵さんがこっち来たら?って言われました」
「いやいやいや」
「ダメですか」
「遊戯室で、さて皆さん、はナシでしょ」
「でも皆さんお揃いですよ」
「いやでも、やっぱり大広間で…」
「そこをなんとか」
「君、向こうの味方なの」
「いや、その、早く解決させたほうが。また次の殺人が起きる前に」
「そりゃそうなんだけどね…」
「…」
「…」
「…来ないね」
「はい」
「チョットさ、もう一回だけ行ってくれる?」
「…」
「行ってくれるかな!」
「…はい」
 

「…帰ってこないな」
 

「…電話してみるか」
 

「…出ないな」
 

「まさか、犯人の餌食に…!?」
 

「つながったっ、もしもし!?小林君?」
「あ、はい」
「いまどこ」
「遊戯室です。(おーい、次小林君だよー)(小林君マジで強ぇーなー) …いま、皆さんを説得しているところです」
「嘘つけ聞こえてるぞ」
「何がですか (あたし小林君に抱かれてもいいわー)」
「相当やらかしてるじゃないか」
「何がですか」
「みんなを連れてきてよ」
「いや、でも、勝ち抜き戦なんで…」
「なに勝ち抜いてんだよ!その中に犯人いるんだよ!?」
「でも皆さんいい人ですよ?」
「だーかーらー!」
「ご主人が亡くなっても、誰も困ってないみたいですし…」
「えっ」
「とにかく、先生もいらしてくださいね。お待ちしてます」
「もしもし!?おーい!」
 

「切ったね…」
 

「…」
 

「…」

「ここで読者の皆さんに挑戦です。解決に必要な全ての手がかりは揃いました。賢明なる読者の皆さんなら、この事件の真相はもうおわかりでしょう。さて、いったい犯人は誰で、どのようにして犯行におよんだのでしょうか?」
 

「…って言ってみたかったな…」
 

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