少年の夢は生きている 伊集院光『のはなしさん』

『のはなし』シリーズも3作目。2001年~2006年までtu-kaのメールマガジンに書いてきた約750本のエッセイから82本+新作書き下ろし3本をまとめたもの。

笑いあり、お馬鹿あり、しんみりあり、ハッとする構成あり、行き過ぎた妄想あり。多岐に渡る球種を使い分けるクオリティは健在。

前も言ったのだけど、改めて少年時代のエピソードの豊富さ・記憶の細かさには驚く。誰しも子供時代は予期せぬ出来事の連続だったはずだけど、その時の状況や感じたことを今の言葉で伝えられるまでよく覚えてるなぁ。

読み終えたとき頭に浮かんだ歌がある。山本正之の「少年の夢は生きている」という曲。

山本正之といえば「ヤッターマン」や「燃えよドラゴンズ」で有名。で、アルバム収録のこの曲は、山本正之の少年時代の出来事をただただ並べていく。なのに、段々とあの頃の夕焼けが浮かんでくる歌なのだ。

中日ドラゴンズの江藤慎一が
サインをしながら頭をなでて
ぼうや元気に育ってくれよと笑いかけた
酔っばらったオヤジが赤い顔のまま
真夏の夜の庭先で肩車をして
あれが天の川だとごつい指を天にむけた
丸太ん棒で建てたかくれ家の中で
おさななじみのアキちゃんが
大人になっても友達だよと腕をくんだ
超能力をもっている新聞記者のおじさんが
おもちゃの刀を念力でまげて
やろうと思えば地球も止まると教えてくれた

ビニール人形をストーブで溶かし、運動会でパンツが破れるよう細工をし、テレビのリモコンがどれくらい遠くから効くか試す伊集院少年。

山本正之「少年の夢は生きている」はこんなサビだ。

少年の夢は生きている 幾年すぎても生きている
橋を渡り山を越えて海に出会っても
深く深く胸に生きている

誇大妄想で、ひがみやで、屁理屈を言う肥満児の少年は、伊集院光の中に今も生きているのだと思う。

関連リンク
少年の夢は生きている|山本正之-歌詞GET

1件のコメント

コメントは停止中です。