魅惑の「地下デジタル放送」

「地上デジタル放送」という言葉が気になっている。正確に言うと「地上」の部分。

今までのテレビもいつの間にか「地上アナログ放送」と呼ばれていてる。「地上」ってなんだ。衛星放送と区別するための「地上」なのかもしれないけど、地上デジタルが出る前からBSもCSもあったし、アナログ放送には「地上」なんてついてなかった。なんでついたんだ。

これはひょっとして僕らの知らないところに「地下」があるんじゃないか。

だからわざわざ「地上」ってついてるんじゃないか。

地下デジタル放送。

文字通りアンダーグラウンドな放送だ。健全なコンテンツとやらは地上デジタルのやつに任せて、ピー音もボカシもない、後でスタッフが美味しくいただいたりしない、そんなアンダーグラウンドなコンテンツが充実。デジタルだから画質もキレイ。

まず確実にアダルトは地下デジだろう。今は地上波で流れないホラー映画や、お笑いウルトラクイズとか昔の過激なバラエティも地下デジだ。水曜スペシャルも「決定的瞬間」も「A女E女」も「バーミリオン・プレジャー・ナイト」もぜんぶ地下デジ。

なんと魅惑的な地下デジタル放送。B-CASカードも見たことのないダークな色合いなんだろう。

そして地デジカの中にも一匹だけ、角の先が下を向いてるやつがいるはずだ。

とりあえず見つけ次第生け捕りにしておこうと思う。
 

彼岸へのオーリー・ドロップ 藤沢周『オレンジ・アンド・タール』

解説を書いているのがオードリーの若林なんですよ。

高校でアウトロー的存在のカズキは、スケボーに熱中して毎日を送る。今日も伝説のスケートボーダーのトモロウのところへ相談に行く彼の心に影を落としているのは、同級生が学校の屋上から落ちて死んだことだった。そして、目の前で事件は起きた。自分って何なんだよ、なんで生きてるんだよ―青春の悩みを赤裸々に描いた快作。

カズキが視点となる「オレンジ・アンド・タール」と、カズキが信頼を寄せる”伝説のボーダー”の浮浪者トモロウが視点となる「シルバー・ビーンズ」の中編二編からなる一冊。二編の時系列はほぼ同列で、カズキがトモロウと話しているとき、トモロウがどんな状態にいるかが後でわかるようになっている。

同級生の突然の自殺に、カズキをはじめ学校や友人たちは不安定な波の中にいる。グラグラな自分、キワキワな友人。青い春はひとりの死によりその濃度を高めて苦しめる。そこで「外の存在」であるトモロウさんに救いをよせるようになる。トモロウ=Tomorrowを期待するように。

「オレンジ・アンド・タール」では登場人物のほとんどが不安定な状態にいる。安定しているトモロウを頼るが、そこである事件が起こる。一方、「シルバー・ビーンズ」ではトモロウが自らを語りだす。彼もまた、不安定な波の中にいるのだ。

本作では全編を通しスケボーをメタファーとして、自分と世界の境界を見つけようとする。テールを蹴って飛んでいる間「無」になる瞬間を見る。繰り返される専門用語とスピード感と虚無。まるで禅のような世界にひきこまれる。

加えて、この文庫の解説をオードリーの若林が書いているのも必見。オードリーが「ダ・ヴィンチ」の表紙に登場したときも「オレンジ・アンド・タール」の単行本を手にしていたほど思い入れがある若林。「僕にとって「オレンジ・アンド・タール」は単なる小説ではない」と語る。

オードリー若林の解説は、作品解説というよりも一読者の視点による手記に近い。自分の中の世間に対するわだかまりと、それを芸人として昇華させるまでの間に「オレンジ・アンド・タール」が存在する。それがまた、『「オレンジ・アンド・タール」を読んだ男』として本編の一部になっているようにも感じるのだった。

カリスマなどいない。みんな自分と世界に折り合いをつけようとしている。自分を求める思春期にも、迷える大人にも、なんらかのヒントをくれる一冊です。

話を聞かない男、地図が読めない女、そして

昔「話を聞かない男、地図が読めない女」という本がベストセラーになった。

男脳と女脳の違いを説明してた本だけど、最近の研究だと男も女もそんなに脳力に差があるわけではないらしい。

じゃぁなんだったの、というわけで、「話を聞かない男、地図が読めない女」の続きを考えてみようと思います。

=====

話を聞かない男、地図が読めない女、戦争を知らない子供たち

=====

話を聞かない男、地図が読めない女、名前がわからない若手イケメン俳優

=====

話を聞かない男、地図が読めない女、英語でしゃべらナイト

=====

話を聞かない男、地図が読めない女、煙が少ないお線香

=====

話を聞かない男、地図が読めない女
ふたりの前に現れる、話の読めない男…

=====

話を聞かない男、地図が読めない女、
標識がない山道、もう動かない車、
地図にない洋館、引き返せない暗闇
愛想がない家政婦、素姓がわからない客人たち、
主がいない宴、扉が開かない部屋、
息がない主、繋がらない電話、
アリバイがない女、話を聞かない男、
明けない夜、降り止まない雨───。

=====

話は聞いてあげた方がいいよね。
 

【告知】『隻眼の少女』の帯にコメントが載りました

すいません、告知です。ちょっとこちらを御覧ください。

こちらは書店にならぶ麻耶雄嵩『隻眼の少女』です(→当時の感想文はこちら

ちょっと寄ってみましょう。

まぁ!

というわけで、文藝春秋様からお話をいただき、『2011本格ミステリベスト・10』に寄せたコメントが増刷分の新帯に掲載されました。おぉー。

昔から読んでる作家さんの本の帯に自分のコメントが載るなんて…。なんとも恐れ多いやら…。

少しでも売上に貢献できれば幸いです。みなさま書店でチェックを!
 

中年サラリーマンのブツブツ

今日のできごと。

コーヒーを飲みに店に入ったら、独りでブツブツしゃべりながら中国語のテキストを読んでる中年サラリーマンがいた。

電車に乗ったら、向かいの席に辺りを見回しながら小声で何かしゃべっている中年サラリーマンがいた。

ラーメン屋に入ったら、独りで鼻歌を歌いながらラーメンを食べている中年サラリーマンがいた。

1日に3回も同じような中年サラリーマンに会ってる。みんな独りでブツブツ言ってる。もちろんみんな別人。なんだこれは?

ひょっとして、中年サラリーマンの心の声が聞こえるようになった?

なんだこのSPEC。

狙った相手の心の声ならまだしも、BGMみたいに中年サラリーマンの声が聞こえるのは嫌だ。しかも何しゃべってるのかギリギリわからない。中年サラリーマンが心の中で助けを求めていたとしてもブツブツ…しか聞こえないから助けられない。うるさいだけじゃないか。

ただ、会議の場で、あっ部長なにも考えてない!というのだけわかる。

でもそれはこんな能力なくても知ってる。

もー。