かもしれない桃太郎

むかし、むかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいたかもしれませんでした。
 
おじいさんは山へ芝刈りに行ったかもしれないし、おばあさんは川へ洗濯に行ったかもしれませんでした。

おばあさんが川で洗濯をしていたとして、大きな桃がドンブラコ~またはスッコッコ~と流れてくるかもしれませんでした。

おばあさんはその桃を拾ったかもしれないし、拾わなかったかもしれませんでした。

仮に、拾ったとして、持ち帰る最中に腰を痛めるかもしれないし、早くも鬼に奪われてしまうかもしれないし、もう落として割ってしまうかもしれませんでした。

無事に持ち帰ったとしましょう。

おじいさんとおばあさんが桃を割った場合、中から元気な男の子が出てくる事は確率的にはとても低いものでした。ここでは男の子が生まれたとし、新生児を育てるための充分な環境が整っていたとします。

桃太郎と名付けられた男の子は「鬼ヶ島の鬼を退治してくるかもしれない」と言うかもしれませんでした。

その時は「じゃぁこのきびたんごを持っていけばいいかもしれない」とおばあさんは包みを持たせることを想定していました。桃太郎は「晩御飯はいらないかもしれない」と言ったとか言わなかったとかしました。

桃太郎が歩いていると、犬、猿、キジが現れ「そのきびたんごをくれたら仲間になってやってもいいかもしんなーい」と言いそうでした。桃太郎はきびたんごを与えてみて反応を伺い、実際はどうあれ、手名付けることに成功したかもしれませんでした。

その後、唯一の食糧を失った桃太郎と仲間たちが、健康を害することなく、鬼ヶ島にたどり着いたと仮定します。

鬼ヶ島には「悪い」と容疑がかかった鬼がN匹生息していました(Nは1以上の整数とする)

鬼がいないかもしれない事態に備え、桃太郎は事前にアポイントメントを取ったかもしれませんでした。

桃太郎と鬼は話し合いをしたかもしれないし、高度な外交取引をしたかもしれないし、調停を挟んだかもしれないし、暴力でねじ伏せたかもしれませんでした。

鬼の財宝を手に入れた桃太郎は、財宝が偽物かもしれないと考え、鑑定士軍団に鑑定を依頼したかもしれませんでした。スタジオに呼ばれたかもしれませんでした。島田紳助に予想金額を聞かれ大きく出たものの結果はサッパリであとは後ろのセットでしょんぼり座っているだけかもしれませんでした。

桃太郎が財宝かもしれないものを持ち帰る途中、歩行者が飛び出してくるかもしれないし、交差点でバイクが飛び出してくるかもしれませんでした。示談で済ますことも可能でした。

桃太郎が帰ってみると、おじいさんは山へ芝刈りに行っていたかもしれないし、おばあさんは川へ洗濯に行って大きな桃を拾ってくるかもしれませんでした。

おわり。

と、ここで、グレゴール・ザムザが不安な夢からふと目覚めてみると、ベッドの中で自分が一匹の、とてつもなく大きな毒虫に変わってしまっているのに気がついたかもしれませんでした。