中野駅には近づくな 大倉崇裕『白戸修の狼狽』

社会人になったばかりの白戸修。アルバイト先や、落とし物を拾ったところで事件に巻き込まれる。人の頼みを断れない、困っている人を見過ごせない、そんなお人好し青年だけど、いつの間にか事件を解決。サクッと読めてクスッと笑える癒し系ミステリー。

『白戸修の事件簿(旧題:ツール&ストール)』に続く稀代のお人好し・白戸修。東京・中野に行くと必ず事件に巻き込まれるという特異体質(?)の持ち主である。

その内容は、落書き犯人を追う「ウォールアート」、コンサート会場設営に潜む妨害「ベストスタッフ」、隠された盗聴器に仕組まれた裏の裏「タップ」、都内中を巡るスタンプラリーと暴力スリ集団「ラリー」、コンサート会場警備にまたしても罠「ベストスタッフ2 オリキ」を含む短編5編。

会場設営や盗聴バスターズ、アイドルの熱烈ファンまで、「その道のプロ」が白戸修を巻き込んでいく。「その道」の世界には「その道」の常識や隠語があって、日常から一歩踏み込むとまた別の世界が広がるのが面白い。特にアイドルファンの「オリキ」はホントにこんなんなってんの!?というくらいちょっとおっかない世界である(でもやっぱりホントっぽい→ オリキとは – はてなキーワード

ある意味マニアックな世界とそこでの犯罪を描きながらも、お人好しキャラ白戸修のおかげで救いのある物語となり、全体として後味のよいライトな仕上がりになっております。軽めだけどしっかししたミステリをお求めの方に。