盤上の生死 柄刀一『モノクロームの13手』

加門耕次郎が気がつくと、見たこともない異様な世界にいた。荒れ果てた大地、濁った空、そして大地に描かれたマス目に配置された人々―。たくさんの人々が倒れている中、目覚めているのは4人だけ。生者の上空には白い丸が、死者の上空には黒い丸が浮かんでいた。どうやら、この世界はオセロゲームのルールに則って生死が決定されるらしい。圧倒的に不利な状況の中、神の手に対抗し、より多くの人々を甦らせる逆転の手はあるのか?一手ごとに緊張感が高まる中、加門たちの運命は。

死後の世界は8×8のオセロ盤。1マスに1人。四隅の2×2の16マスが空いていて、中央の2×2の4マスが白石の生者、残り44マスが黒石の死者という状況。盤の外をふらふら歩いてる「さまよえる者」が次の石となる。だいぶムチャクチャな世界です。

いかに白石の生者を増やして終わるか、という、もう完全にオセロゲームの話になってしまうのだけど、工夫はいくつかされている。次の一手までに制限時間があり、オーバーすると全員死んでしまう。良かれと思って白(=生者)を増やしていくと、色んな人がワイワイ言い出して次の一手がなかなか決まらない。次の一手の論争と迫るタイムリミットがサスペンスを盛り上げる。

また、盤上には知り合い同士が存在している。親子、夫婦、恋人、友人、宿敵…。この人を生き返らせてくれ。あいつを殺してくれ。それぞれの思惑が交錯して盤上は混迷を極める。

この辺の人間模様の交錯をうまく出せればもっと面白くなると思うのだけど、視点人物が一部に固定されていてあまり考えの多様性が出てなかったり、終盤はどうしても次の一手が限定されたりして、ちょっともったいない。ラストも…な感じ。

神の采配により、四隅の石はどうしても黒になってしまう。この状況下での逆転は面白いものの、ちょっと小説としてはつらいなぁ…と思いました。この後、龍之介シリーズの『人質ゲーム、オセロ式』が出てるので、ひょっとして壮大な前フリなのだろうか…。