鏡の中のマリオネット 乾くるみ『セカンド・ラブ』

1983年元旦、僕は春香と出会う。僕たちは幸せだった。春香とそっくりな女・美奈子が現れるまでは。良家の令嬢・春香と、パブで働く経験豊富な美奈子。うりふたつだが性格や生い立ちが違う二人。美奈子の正体は春香じゃないのか?そして、ほんとに僕が好きなのはどっちなんだろう。

『イニシエーション・ラブ』の衝撃ふたたび、の煽り。ふたりのそっくりな女性の間で揺れ動く男の恋愛模様が淡々と続く。そして最後に明かされる…というイニラブと似た構成。

確かに衝撃のラスト、ではあるのだけど、ミステリ読みとしては「そっくりな二人」を出されるとどうしてもアレを疑ってしまう。前作の衝撃の教訓もあるので身構えすぎてしまった。純粋に楽しめずちょっと不幸なことに…。

作者のことなので、恐らくまだ気づいてない伏線もたくさんあるんだろうなぁ。頭を空っぽに、物語の流れるままに任せれば、ラストにひっくり返ることは間違いなし。女は怖いわー。

ちなみに。

「セカンド・ラブ」と言えば中森明菜。それに対して「ファースト・ラブ」と言えば宇多田ヒカル。

というわけで、この本の偶数章のタイトルは宇多田ヒカルの、奇数章のタイトルは中森明菜の曲タイトルから取られています。お持ちの方はご確認を。