血を争え、縁を繋げ 麻耶雄嵩『隻眼の少女』

け、傑作きました…。

寒村でおきた殺人事件の犯人と疑われた大学生・静馬を救った隻眼の少女探偵・みかげ。事件は解決したが、18年後に再び悪夢が…。古式ゆかしき装束を身にまとい、美少女探偵・御陵みかげ降臨!

書き下ろし長編。「第一部 一九八五年・冬」「第二部 二〇〇三年・冬」の二部構成。

「スガル様」という神を奉る旧家で起こる連続首切り殺人事件。跡取り、伝承、信仰などの要因がいくつも絡み合い、事件は混迷を極め、多数の犠牲者を出すも、みかげの推理をもって解決がくだされる。ここまでが第一部。まだ全体の半分だけど、ここまででもひとつの長編としてのクオリティを十分保っている。

しかしまだ幕は降りない。第二部。18年後。全く同じ手口で殺人は繰り返される。あの解決は偽りだったのか。経ちすぎた年月は「スガル様」を取り巻く状況も変え、動機はますますわからなくなる。

旧家の血脈を題材に扱い、派手な不可能状況はなく、物証やアリバイなどの手がかりは細々としている。探偵が美少女&巫女衣装(正確には水干)であることを除くと麻耶作品にしては驚くほど地味な道筋を行く。

しかし読み終わってみると、もう、全体の構造に感嘆せずにいられない。全420ページ中、怒涛の運命が待ち受けるのは残りわずか20ページの地点から!広がりすぎた18年越しの大風呂敷が、きれいに畳まれるどころかテーブルクロスのように引き抜かれる。とても立ったままでいられない。膝をたたくどころか、膝をついてしまう真相。

ネタバレを恐れて感覚的な感想になってすいません。間違いなく今年の本格推理の収穫のひとつです。すごすぎます。すごすぎますよ。