真相まであと何km 米澤穂信『ふたりの距離の概算』

春を迎え、奉太郎たち古典部に新入生・大日向友子が仮入部することに。だが彼女は本入部直前、急に辞めると告げてきた。入部締切日のマラソン大会で、奉太郎は長距離を走りながら新入生の心変わりの真相を推理する!

古典部シリーズ第五弾。今回の舞台はマラソン大会。

走りながら4月からの出来事を回想する奉太郎。大日向はどんなやつだったか、どの場面でどんな考えをするやつだったか、気になった出来事を思い出す。この回想シーンが日常の謎を解く短編として成立しているので、長編なんだけど連作短編のような、面白い構造になっている。

思い出しては何かに気がつき、時には後方から走ってくる古典部メンバーを待ち伏せして確認、ゴール間近まできていよいよ大日向に接触…という、マラソンの残り距離をタイムリミットとして盛り上げる構成がホント巧い。そして回想シーンや確認事項、その他あれやこれやまで伏線として繋がってしまう妙技!

日常の謎+心理戦なので、どうしても根拠が薄くまさに薄氷を渡る場面もあれど、構成力に唸りまくりです。

ハズれないなぁ、古典部。