動物マニアの異世界論理 大倉崇裕『小鳥を愛した容疑者』

鬼警部×動物オタク=動物満載奇天烈事件!捜査一課でならした鬼警部。事故後の復帰先は世にも不思議な部署だった……。動物マニアがその愛ゆえに引き起こす事件! 知られざる生態が事件解決のキーに!

4編からなる短編集。容疑者や行方不明者などが飼っていたため引き取り手がいなくなってしまった動物たちの面倒を一時的にみる、というのが建前なんだけど、一筋縄ではいかないものばかり。100羽を超えるジュウシマツ、アパートに残された大小2匹のヘビ、一戸建ての庭を占有する巨大なリクガメ、部屋で放し飼いのフクロウまでご登場。

で、飼育状況や動物の生態から事件の解決にどんどん近づいていく。これがなんだか新しい。

容疑者も捜査官も動物好きなので「この動物を飼うのにこの部屋はおかしい」「三日も放置されていたのにこの状況は不自然」といった推理が成立してしまう。かつて西澤保彦がSF的状況で本格推理を展開した時のような「異世界の中での推理」が動物好きという輪の中で出来上がっちゃてるのだ。

こちらとしては専門知識がないので指をくわえて見てるしかないんだけど、独自の世界の中の独自の推理劇はなかなかどうして楽しい。容疑者の動機まで動物好きフィルターがかかっているので、落ち着く先も予想がつかない。

動物好き捜査官の薄(うすき)巡査のキャラも楽しくてテンポ良く読める。福家警部補に次ぐシリーズとして続編も期待しています。