適当男の真顔 高田純次・茂木健一郎『裏切りの流儀ーあらゆることはバランスで成り立っている』

今までの高田さんの本で一番面白いよ。
ーーー他は読んだことないけど。(茂木)

「五時から男」高田純次と「アハのおじさん」茂木健一郎の対談本。

茂木健一郎が、「適当」で「一人高度成長期」状態の高田純次にこそ日本を元気にする秘訣があるのではないか、と高田純次から話を聞き出していく形になっている。

だが一方、「テキトー男」高田純次は冒頭にこんな告白をする。

適当男っていうのは、二年くらい前から言われるように鳴ったんですけど、自分から言い出したわけじゃないんです。でも言葉だけが一人歩きしちゃって、「あれ?どうやったら適当になるんだっけ」って分かんなくなちゃった。
(中略)
例えば便所行っても、水を流さない方がいいのか、お店は行っても、金払わないで出てきた方がいいのか。右折禁止の道は必ず右に曲がるようにしてたら適当かもしれないけど、捕まっちゃうしね(笑)そういうことに悩んでますね。

「五時から男」や「元気が出るテレビ」で定着し、最近になって「テキトー」さを再評価されている高田純次は、自らについたレッテルと自身のギャップをちゃんと考えてるのだ。

そんな高田純次が語る。キーワードは「負け好き」と「セルフプロデュース」

自らを「負け好き」と語る高田純次は、負けることで得るものの大切さを重視している。

絶対に負けた方が、ステップアップになりますよ。麻雀でも勝ったときより負けたときに「どうしてああなったんだろう」って考えちゃいますもん。ただ勝って「よかった」と思ってるより、その方がいい。

「一回負けても、別の勝負で勝てばいい」。大学受験に失敗して専門学校に行き、会社勤めを経て30歳から劇団・東京乾電池に入った高田。異色の経歴から現在の地位になるまで、負けては考えて、やりたいことに辿りついてきている。

また、「五時から男」から貼られたレッテルを利用して、どうやったら面白く見られるかを、状況や自分の年老いた肉体まで俯瞰して考える。時には裸にもなる。役割を演じる、ということを常に意識している。無意識のうちに「セルフプロデュース」を行っている。

茂木健一郎もちゃんと仕事をしていて、高田純次が思っていたことに脳科学の立場から裏付けをとって安心させてあげて、さらにトークを引き出している。たまに下ネタを振られてアワアワしていたりする(「茂木先生はまだ元気だから股間でテーブルの一つも持ち上がるでしょ(笑)」とか言われている)

不良がたまに見せる優しさのように、高田純次がたまに見せる真顔にはドキリとするものがある。

「適当日記」などとは違い、真顔の高田純次を見れる一冊。その姿はまさにプロフェッショナルで、カッコいい。