「吾輩は猫である。名前はまだない」
夏目漱石『吾輩は猫である』の有名な出だし。吾輩は、とか意識をもつくらい育ってるのに、名前がまだついてないのって逆にすごい。「名前はまだない」をいろんな作品にくっつけたら、おもしろいことになるんじゃないだろうか。
「親譲りの無鉄砲で子供の頃から損ばかりしている。名前はまだない」
「働けど働けど 我が暮らし楽にならざり ぢっと手を見る。名前はまだない」
「ある朝、グレゴール・ザムザが不安な夢からふと覚めてみると、ベッドの中で自分の姿が一匹の、とてつもなく大きな毒虫に変わってしまっているのに気がついた。名前はまだない」
「それはいつ生まれたのか誰も知らない。 暗い音の無い世界で、ひとつの細胞が分かれ増えていき、三つの生き物が生まれた。彼らはもちろん人間ではない。また、動物でもない。 だが、その醜い体の中には正義の血が隠されているのだ。名前はまだない」
「見知らぬ、天井。名前はまだない」
「体は子供、頭脳は大人!名前はまだない」
「室井さん聞こえるか、名前はまだない」
「メロスは激怒した。名前はまだない」
メロスって言ってんのに。