とても、粗筋を書くのが難しい。
少年(三歳児!)が「世界」を救うために「悪」と戦う、というようにアウトラインを書き出すと、とてもステレオタイプに見える。でも、そうじゃない。詳しく書こうと思えば書き出せると思うけど、なんだかそれは、僕の手でこの物語を縮小させてしまう気がしてしまう。
とても、感じたことを書くのが難しい。
読後感は決して、マイナス、ではない。でも、深い感動や、涙や、感嘆や、驚愕や、その他大きく感情の針が動きだすわけでなく、なんかぼんやりと反芻している。これはなんなのだろう。心に場面が浮かんでは、降り始めの雪のようにじんわり消えていく。
僕は高橋源一郎の熱心な読者ではなくて、何年も前に『さようなら、ギャングたち』を一度読んだきり。記憶はおぼろげ。だから他の高橋源一郎作品と比べてどう、という言葉は持ち合わせていない。
ただ、一つ、言えるとしたら、子供を持つ親になっているいま、言えるとしたら、この本はずっと僕の本棚に置いてあることになると思う。
繰り返し取り出しては、ランちゃん、キイちゃんに会うことになるだろうと思う。
長い付き合いになる予感だけ、今はしている。
※参考リンク
高橋源一郎 (inomsk) on Twitter:5/1~13まで、毎日午前0時に高橋源一郎本人が『「悪」と戦う』のメイキングを執筆していました。