過去から未来へ繋ぐバトン 宮下奈都『スコーレNo.4』

自由奔放な妹・七葉に比べて自分は平凡だと思っている女の子・津川麻子。そんな彼女も、中学、高校、大学、就職を通して4つのスコーレ(学校)と出会い、少女から女性へと変わっていく。そして、彼女が遅まきながらやっと気づいた自分のいちばん大切なものとは…。ひとりの女性が悩み苦しみながらも成長する姿を淡く切なく美しく描きあげた傑作。

骨董品屋の長女・麻子の成長を、全体を4章にわけてそれぞれ中学時代・高校時代・就職直後・就職して3年後、という年代設定にして、連作短編として仕上げている。あの子がこんなに立派になって…という仕組みになっていて、終盤には、おっちゃんは中学の頃からこの子知ってんねんでーとすっかり物語に入ってしまう。

自分は地味で誇るところがないというコンプレックスを抱え、六人家族で暮らす多感な思春期を過ぎ、就職し…という流れで、就職してからがもう白眉。入社後の戸惑、突然の現場への派遣、そこから徐々に人間関係を築いて、仕事も覚え…と、その中で過去に自分に起きた出来事が今の仕事につながって…と、いろんなものがリンクしていく。人生はその場しのぎではなくて、過去の自分が未来の自分を作っていく。

特に”何かに目覚める時”が鮮やかだなぁと感じました。初恋や職場での気づきと言った場面で、パァァと目の前の世界が変わる。自分の中の変化を自分で感じる瞬間が美しい。

たぶん女子向けの本に分類されるんだろうけど、娘をもつ親御さんにもオススメです。もう、主人公をハラハラしながら応援してしまう自分がいます。

この本はTwitterで書店員の方々によって結成された「秘密結社」が、大好きな本として全国の書店(その数約100店舗!)で大プッシュしているもの。ハッシュタグは#Schole。Twitterが生んだフェアでこの本に出会えたことを感謝します。お近くの書店でも平積みされてるかもしれませんよ。

2件のコメント

  1. RT @inomsk: 『スコーレNo.4』の感想を書きました。書店員秘密結社の皆さんに感謝! RT @inomsk: ブログ更新: 過去から未来へ繋ぐバトン 宮下奈都『スコーレNo.4』 – http://bit.ly/b9tkj9 #Schole #Scholeno4

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