日常系報道カメラマン 梅佳代『うめめ』

先日の角川文庫の太宰治の表紙が味写すぎる件について、よく調べてみたら、あの表紙は太宰治生誕100周年の梅佳代×祖父江慎のコラボカバーだったらしい。そういうことだったのか!
 →太宰 治生誕100周年フェア|角川書店(梅佳代×祖父江慎の対談あり)

これまた先日の天久聖一『味写入門』の感想では帯に「プロには無理」と書いてあるのだけど、味写を撮れるプロがそういえば、いたいた。梅佳代である。

梅佳代は何冊か写真集を出しているのだけど、小学生男子のおふざけばかり収まってる『男子』や、実の祖父を10年撮り続けてた『じいちゃんさま』も好きだけど、やっぱり最初の『うめめ』は衝撃だった。

なんでもない住宅地、駅、公園。なのに、ハプニングの一瞬がいくつもいくつも撮られている。「どうしてこうなった!?」と声をあげてしまうインパクト。大人が通勤してる横でアスファルトの上でひっくり返っている小学生、1つのコインロッカーに群がっているご親族、フライドポテトをこぼしてるのに遠くを見てる子供(表紙)、衝立の向こうから突然現れるノッポン(東京タワーのマスコット)…。

常にカメラを持ち歩かなければ撮れない写真なのはもちろんだけど、瞬間を見逃さない「目」と何かを引き寄せる「磁場」が三位一体揃わないとこんなのできないなぁ。

ニュースばかりが「報道」じゃない。日常の変なことを報じたっていいじゃないの。脱力しながら不思議な余韻。日常の横で、奇妙な扉が半ドアで開いてる感じです。