マイムマイムで舞う夢

「ダンス練習場 舞夢」という看板を見かけた。

舞う夢と書いて、たぶん読み方はマイムだと思う。でも「マイム」で「ダンス」だとマイムマイムしか浮かばない。

マイムマイムが出来ない人ばかり集まったらどうしよう。

確かにあのレベルのステップができないとなると、こりゃぁ運動の神経がどうかと思われるそう。この危険を回避するのは難しい。「マイムマイムできないの!?」と大人になってから言われるのはやはり恥ずかしい。部下に示しがつかないミドルもいるだろう。

知り合いの誰にも見られず、そして熟練者による的確な指摘とフィードバックが得られる練習場があれば申し分ない。同士が集まり、一つの目標に向かうことによりモチベーションの持続も期待できるだろう。ここでマスターしておけば突然のキャンプファイヤーのお誘いにも動じずに済む。取って付けたような理由をつけて断っていた日々とさよならだ。「昨日ムーンウォークをやりすぎてしまって右足首が…」とか嘘つかないでよくなる。そもそもムーンウォークもできない。

鏡の前に並ぶ生徒たち。親に付き添われた中学生から主婦、中高年、お年寄りまで年代は様々。基本のステップをおさらいした後、手をつないで輪になりましょう、と先生(大澄賢也似)に指示され、ハニカみながら隣人と手をつなぐ生徒たち。初対面の人と手をつないでいる姿が鏡にうつっているのはなんとなく照れくさい。

それから延々と鳴り続けるマイムマイム。生徒の輪の中央で手拍子する先生。おさらいした基本ステップは、最初こそ足並みが乱れたが段々揃ってきた。曲調が変わる。見せ場だ。マイムマイムマイムマイム…中央に集まりながら、たどたどしくセッセッセ!と叫ぶ一堂。

「違う!セッセッセじゃない!BESASSON!もう一回!」

元はイスラエル民謡のマイムマイム。先生の発音が良すぎてBESASSONってなんだかわからない。もう一周、ダメ出し、もう一周…。

マイムマイムの道は厳しい。舞う夢を見た後は、体は寝汗でビショビショだと思う。