穂村チカ、高校一年生、廃部寸前の弱小吹奏楽部のフルート奏者。上条ハルタ、チカの幼なじみで同じく吹奏楽部のホルン奏者、完璧な外見と明晰な頭脳の持ち主。音楽教師・草壁信二郎先生の指導のもと、廃部の危機を回避すべく日々練習に励むチカとハルタだったが、変わり者の先輩や同級生のせいで、校内の難事件に次々と遭遇するはめに―。
初野晴は初めて読みます。4編からなる短編集。吹奏楽部の部員を増やす=難題を解決して仲間にする、という、これだけ取り出すとRPGみたいな展開。1編づつ奏者を仲間にしていく中で、いわゆる日常の謎系の青春ミステリになるんだろうけど、全然「日常」じゃないのがポイント。
4編のあらすじはそれぞれこんな感じ。
「結晶泥棒」
科学部が文化祭で展示する予定だった硫酸銅の結晶が盗まれた。硫酸銅は劇薬で、表沙汰になると文化祭が中止になる恐れもある。タイムリミットは3時間。
「クロスキューブ」
高校に進学すると同時にオーボエを辞めた女子。彼女は亡き弟が残したパズルに心を縛られていた。それは”六面全部が白いルービックキューブ”。
「退出ゲーム」
演劇部にいるサックス奏者を勧誘したい。演劇部が提示した条件は「即興劇対決」。制限時間内に相手チームの誰かを舞台から退出するように仕向ければ勝ちなのだが、即興劇ならではのなんでもありの条件に苦しめられ…。
「エレファント・ブレス」
明部が開発した「想い出まくら」。3色の色のイメージを元に思い通りの夢を見る装置、なのだが、匿名の購入主から「エレファント・ブレス」なる謎の色の指定が届き…。
それぞれは手がかりの提示により読者が真相にたどり着けるようなものではなく、科学・地理・歴史など多種多様な知識を総動員しないと真実に辿り着けない。高校1年生については博識すぎるのだけど、知識に置いてきぼりにされるわけでもなく、「そういうことだったのか!」というクレバーな解決が待っている。
博識に置いてけぼりにされない理由は、その解決が登場人物の心情や動機に巧みにリンクしていることにもあるとおもう。どうしてこんなことをしなければならなかったのか、面倒なところもあれど、いつのまにか彼らの世界に入り込んでしまう自分がいる。雰囲気的に真木武志『ヴィーナスの命題』をちょっと思い出したりもした(これも好きなんだよなー)
ちょっとした笑いのくすぐりの要素もあり(『エレファント・ブレス』の生徒会長と発明部兄弟とかもう面白くて…)大変楽しかったです。続編の『初恋ソムリエ』も読もうと思います。
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