乾くるみ『六つの手掛り』

雪野原に立つ民家で、初めて会った者同士が一夜を過ごし、翌朝、死体発見(『六つの玉』)
姪に話して聞かせる、十五年前の「大学生・卒業研究チーム」爆死事件の真相(『五つのプレゼント』)
大学の補講中、マジック好きな外国人教授が死んだ、ESPカード殺人事件(『四枚のカード』)
中味を間違えた手紙と残された留守電が、エリート会社員殺害の真相を暴く(『三通の手紙』)
特注の掛軸は、凝ったイタズラが大好きな、地方の名士がが殺された謎を知っている(『二枚舌の掛軸』)
決定的な証拠がありありとそこに存在した、ベテラン作家邸殺人事件(『一巻の終わり』)
見た目は「太ったチャップリン」!? 林茶父が、今日もどこかで事件解決。

短編集なんですが、それぞれのネタが1つの短編に納まる分量じゃなくて、もうギュウギュウな感じ。後半はずっと謎解きのためにしゃべりっぱなし。生放送で残り時間少ない、みたいな急ぎよう。ギュウギュウ、ということは裏を返せばそれはもう濃いわけで、フーダニットもアリバイものも伏線・手がかりをみっちり配置して事にあたってます。

『三通の手紙』のロジックとか、『二枚舌の掛軸』のフーダニットとか、一つ一つ感心しつつ、最後の『一巻の終わり』を読み終わったあとの遊びにニヤリ。本格推理を読み慣れた方向け。