北國浩二『リバース』

誰もが振り向くような自慢の恋人をエリート医師に奪われてしまった省吾。あることからこの医師が彼女を殺してしまうと「知った」彼は、全てをなげうって奔走する。そんな省吾の「執着」に、周囲の人間はあきれ、次第に離れていってしまうのだが…。やがて、事態は思いも寄らない方向へ転じていく。痛々しいほど真っ直ぐな気持ちだからこそ、つかむことのできた「真実」とは。

帯には乾くるみ推薦の文字。ってことはあんな感じの仕掛けがゲフンゲフンと思ったらそうでもなく。

あらすじには「全てをなげうって奔走」とあるのですが、そんな体のいいものではなく、やっていることはもろストーカー。元カノと医師を監視し付け回す。その執着・粘着たるや、全然感情移入できない。なにをそんなに惚れることがあるのかとちょっと引き気味である。

事件にいったん解決がつくのが全体の4分の3ぐらいのところ。とはいえなんか変なとこあったよなぁと思っていると、そこからさらに急展開が待つ。クルリ、クルリと反転していく事実。終わってから振り返れば、その考えぬかれた構成はなるほど乾くるみ推薦って感じの寄木細工。タイトルの『リバース』は「反転」のreverseでもあり、「再生」のre-birthでもあるのだ。

ただどうしても主人公に肩入れできないのが残念で。彼の物語なのに、なんか彼の味方になれない。あんなに目の前しか見れなかったストーカーが、終盤であんな長い謎解きできるなんてと、どうもちぐはぐな印象が残ってしまうのだった。