森見登美彦 『夜は短し歩けよ乙女』

こんなお話読んだこと無い。傑作!快作!そして、祝!森見登美彦氏ご成婚!

「黒髪の乙女」にひそかに想いを寄せる「先輩」は、夜の先斗町に、下鴨神社の古本市に、大学の学園祭に、彼女の姿を追い求めた。けれど先輩の想いに気づかない彼女は、頻発する“偶然の出逢い”にも「奇遇ですねえ!」と言うばかり。そんな2人を待ち受けるのは、個性溢れる曲者たちと珍事件の数々だった。山本周五郎賞を受賞し、本屋大賞2位にも選ばれた、キュートでポップな恋愛ファンタジーの傑作。

「先輩」視点と「乙女」視点で語られる、春夏秋冬に分かれた4編の連作短編集。1編ごとに舞台は異なり、キテレツなキャラクターと奇怪な出来事が、夢幻と現実の狭間で右往左往する。あぁ、なんと表現したものか。

「先輩」視点は『太陽の塔』『四畳半神話体系』でもお馴染み非モテダメ学生なのだけど、「乙女」視点がまた、作者の妄想の賜物ともいえるピュア女子像。二つのすれ違う視点を行き来するのがとても楽しい。そして、一見、勢い任せの珍騒動に見えながらも、実は周到に伏線が張られていたりと油断ならず、大変おなかいっぱいのできばえ。

色とりどりで、ハイテンションで、それでいて柔らかい、幻想と妄想の爆発。これからの人生、思い出しては何回か繰り返し読み返す予感がする。

   

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  1. ピンバック: ◆小耳書房◆

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