乾くるみ『クラリネット症候群』

過去に徳間デュエル文庫で出版された「マリオネット症候群」と書き下ろし中篇「クラリネット症候群」の2本セットであります。どちらもミステリの色を匂わせつつもなんともヘンテコなお話。

夜中に突然、憧れの先輩に自分の体を乗っとられてしまう主人公の女子高生。乗っ取られたとはいえ意識はある。しかし乗っ取った先輩と意思の疎通はできないので、なんだか乗り物に乗っている気分。しかしそのうち、先輩が誰かに殺されていたことがわかり…というのが「マリオネット症候群」。

巨乳で童顔の憧れの先輩にいいところを見せようと、同居人のクラリネットを勝手に持ち出して吹いたのはいいけども、やってきた不良にボコボコに壊されてしまった男子。クラリネットが壊れた時から耳に異変が。「ド」と「レ」と「ミ」と「ファ」と「ソ」と「ラ」と「シ」の音が聞こえなくなっている!というのが「クラリネット症候群」

どちらのあらすじもまだまだ序の口。犯人当てに向かいそうになる「マリオネット症候群」、暗号ミステリに向かいそうになる「クラリネット症候群」だけども、急ハンドルを何度も切って展開はあらぬ方向へ。論理や暗号などの技巧も散りばめつつ、ドタバタギャグからSFまでイメージが飛んでいく。やりすぎでお腹いっぱい。この人しかこんな話書けないなぁ。

あんなに次々と変な展開がやってくるのに、長さは2本あわせて文庫一冊333ページと濃縮還元スリム設計なのも良ですなぁ。早く長編も出ないかな。