せきしろ『去年ルノアールで』

今日も今日とて、「喫茶室ルノアール」で暇を潰す筆者。カフェほどお洒落でなく、喫茶店ほど小さくまとまってなく、混沌とした人種が集まるルノアール。客や店員を観察しているうちに始まる、妄想力いっぱいのエッセイ。こんな無気力妄想エッセイが、『relax』で4年も連載されていたということにまず驚かされる。

まずルノアールに来る人がおかしすぎてすごい。アニマル柄の奇抜なセーターの中年女性、「車をかじりません」と泣いて父親にわびる子供、洗面所で髪をあらって出てくる客、談笑の末にセカンドバックから500万円を取り出して受け渡す二人組み、ココアを頼み「ミルクを抜いてください」と店員に何度も注文をつけ(その度「かしまりました」と答える店員)あげく厨房にまで乗り込んでミルクを抜いてくれと頼んだのに一口も飲まずに帰る女性客などなど、とにかく変すぎる。

こんなおかしな場所設定を描き出した時点で、もう何を乗っけても面白くなること必死。ここで筆者は妄想力を駆使しておかしな客の背景を想像したりする。おかしな客の行動を「表」とするならば、妄想をもって「裏」を取るのだった。もはや毒をもって毒を制すという泥仕合。たまに全く関係なく、笑っていいともが終わった後のタモリはどうなるんだろう?誰もいないアルタでたそがれるのか?とか想像しだすけど、これもたまらん。

ルノアール、行ったことあるけど、こんな場所だっけ?と、実地で確認せずにはおれなくなってくる。無益で無気力な無茶エッセイ。映像化もされてる(→去年ルノアールで DVD-BOX~深煎り妄想セット~)のがものすごい気になる。

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