伊集院光『のはなし』

初エッセイ集だったとは。

伊集院光の魅力が詰まった一冊。こんなエッセイ集を、今まで誰も、読んだことも見たこともないはず。連載5年、構想4年、修正1年。伝説のエッセイ、ついに刊行! 爆笑!感動!鳥肌!の全82話。

携帯会社のメールマガジンに数年に渡り書いたコラム750編(!)から厳選された80編。そんなに書く前にちょっとずつ本にすればいいのに!長さも3~4ページ程度で程よく、次から次へと読んでしまう。

それにしても現在や過去の「恥」をあますとこなく公にしてしまうMっ気たるや。エロ本を買いに行こうとして遭難しかけたり、フリーマーケットで客相手に向きになったり、気まずい家族との思い出や少年時代の背伸びを余すところなく笑いに変え、たまにドキリとするようなトラウマに触れるときもあるけど、気がつくとまた何食わぬ顔して母の財布から小銭をくすねていたりする。そのオープンさと記憶力って、実はとてもすごい能力だと思う。

尺の都合なのか編集の方針なのか、ラジオで聴かせるブラックな面はかなり薄まっている。しかし、その分読みやすく、話も濃縮されているため、万人向けに仕上がっている。テレビで見る「なんだか雑学に詳しいデブ」という印象だけ持っている方にぜひオススメしたい。この才能に触れないなんてもったいないですわ。
 
※追記(2010/5/6)
『のはなし』が文庫になって、『のはなし にぶんのいち』という名前で2冊刊行されました。単行本未収録の撮り下ろし「ヘンなもの写真」もどーんと掲載されています。趣味で撮りためた3万枚(!)からの厳選ヘンなモノ。