宮嶋康彦『たい焼の魚拓』

おふざけのつもりがライフワークに。

今や絶滅寸前の「一匹焼き」たい焼37種を集めた魚拓集。日本各地で人知れず生息する天然たい焼の、体長・値段・採取地など全データを掲載すると共に、それぞれにまつわるエピソードを添えて紹介した「レッドデータブック」。

この本では、一匹一匹金型から作られるたい焼きを「天然もの」と呼ぶ(反対に鉄板で量産されるものを「養殖」と呼ぶ)。そしてその「天然」たい焼きを魚拓にとってしまっているのである。こんな感じ。以外と立派な魚拓なのだった。しかも店ごとに違う。さすが天然。

まえがきによると、最初はおふざけで魚拓を取って、部屋に飾って、来客から何の魚と聞かれてエヘヘって感じだったらしい。「天然の採取」という使命を自分でうっかり背負ってしまったがためにここまで来てしまったみたいである。おふざけでもなんでもずっと続けると、自分で「続ける意味」をつけてしまうものだなぁ、と思った。

面白いのは本に載せているのは魚拓とデータだけで、本物の鯛焼きや店舗の写真は一切載ってないこと。鯛焼きのガイド本にもなりうるのにオール白黒です。なんてストイック。ミーハーではない、本物の鯛焼き好きにこそ必要な本なのではなかろうか。

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