山田ズーニー『あなたの話はなぜ「通じない」のか』

こんな例でこの本は始まる。

「何を言うか」よりも、「だれが言うか」が雄弁なときがある。例えば同じニュースでも、どのメディアが言うかで、ぐっと印象は変わる。
ついに宇宙とコンタクト(日本経済新聞)
ついに宇宙とコンタクト(東京スポーツ)

自分と相手が「通じる」ためのコミュニケーション論。とは言え、単なる技術論にあらず。自分の想いを伝えて、相手に受け止めてもらって、共感と信頼を得るまでの、著者の考え抜かれた想いがギュッと詰まっている。もうこの時点で著者から読者へ言葉が通じまくりなのだ。

冒頭の例は「メディア力」と表現されている。どんな言葉でもそれを言う人によって捕らえ方が変わる。「メディア力」を持っている人ほど話が通じやすい。では「メディア力」上げるにはどうしたらいいのか?

ここで作者は小手先の交渉テクニックを持ち出したりはしない。話を通じさせるには、まず通じさせる自分の意見をはっきり持つこと。自分の意見をはっきり持つためにはまず考えること。そう、この本では「考える方法」に主眼を置かれて書かれているのである。

なぜ正論が通じないのか、全く言葉が通じない時に振り返るべき点はなにか、共感が生む効果とは…などなど、人と通じ合うための「根っこ」が余すところなく語られている。

NHKのテキストにもなった『話すチカラをつくる本―この一冊で想いが通じる!』もこの本がベース。『話すチカラ~』もエッセンスを取り出して読みやすいけれど、より作者の想いが綴られている本書の方が僕は好きです。

いたるところに気づきがあって、読み終わったあともこの気づきを忘れたくないと切に思う。うわべではない核心の話をしてくれる、まさに人とつながるための教科書。著者は言う、案ずる無かれ、みんな最初は初対面だったのだ、と。
 

1件のコメント

  1. ほぼ日「おとなの小論文教室」の山田ズーニーさんの本はホントおすすめです。文章を書くこと、伝えること、考えることに対する熱量がすごいです。一冊選ぶならまずこれを → 山田ズーニー『あなたの話はなぜ「通じない」のか』 | イノミス http://j.mp/n4VDiy

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