昔々、人々がコミュニケーションを持とうとしたら、直接会って話すしかなかった。より親密になれば、何も言わなくても話が通じる仲になった。「以心伝心」という言葉も生まれた。
電話が生まれ、離れていても話せるようになった。直接会いに行かなくてもよくなった。
ポケベルが生まれ、電話が欲しい、という旨だけ伝えられるようになった。電話をかけれる時にかければよくなった。
メールが生まれ、用件を一方的に伝えられるようになった。いつでも好きなときに読んで、返事をすればよくなった。
ネットが生まれ、ブログやmixiやtwitterが生まれ、読みたい人だけ読めるような文を書けるようになった。返事が欲しくて、とりあえず何かつぶやいたりした。
そして「空気を読め」と言われるようになった。
コミュニケーションをとりたくて、あの手この手の手段が生まれた。それゆえ、人と人は安心してどんどん離れていくようになった。物理的にも、心理的にも。
これから先、離れて離れて、叫んでも届かなくて、返事が欲しくても黙っていて、そして行き着くところは「以心伝心」なんじゃないかと思う。
でも最初の「以心伝心」とは、なんだかだいぶ遠いところに来てしまった、とも思うのだ。
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『やさしさの精神病理』(→感想)を読んで思ったことのメモでした。