鳥飼否宇『官能的――四つの狂気』

数学×生物学 = 変態+バカミス。興奮すればするほど頭が冴え渡る変態数学者と、その数学者の生態を観察する助手が引き起こす3つの事件+アルファ。

変態助教授・増田米尊のフィールドワーク中、ターゲットの女性が公園のトイレで惨殺される。「唯一の」目撃者・増田の話が事実とすれば、彼以外に犯人はいなくなるのだが…?(「夜歩くと…」)
4つの事件に、変態数学者が超絶思考で挑む。

主人公の増田は己の変態さ故に事件に巻き込まれまくりなのですが、この窮地を解決するために行われるのが「周りがよってたかって増田に罵詈雑言を浴びせる」という行為。興奮すると頭が良くなるのでこんなんなってしまうのだ。トミーとマツの「トミ子ー!」みたいなものである。ちがうか。

下ネタを中心としたくすぐりが多くニヤニヤしっぱなしですが、やれパンティだ覗きだストーキングだと書かれた文章に、ページ右上に堂々と「官能的」と大書きされており、とても電車の中で読めない感じで困ったもんですよニンニン。

それでもミステリ部分がしっかり作りこまれており、大小仕掛けあり捨て推理あり。しかしなにぶんベースが変態なので、その上に立つ楼閣たるや、なんとも奇妙な仕上がり。3つの短編を経て最後に待ち受ける「四つの狂気」でその奇妙さも最高潮に。あのあれがあぁだったんかい!とスッキリするやら脱力するやら。

いくつ書いてもますます冴え渡る鳥飼否宇のバカミススキル。今年も健在であります。