山田正紀『阿弥陀(パズル)』

「恋人がエレベーターに乗ったまま戻ってこない」。週末の夜。会社員の男の訴えを聞き、警備員の檜山はビル内を探す。しかしどのフロアにも彼女の姿はない。ビルの外にも出た形跡がない。37台もの監視カメラをかいくぐり、彼女はどこへ消えたのか?

エレベーターを縦棒、フロアを横棒として、ビルを巨大なあみだくじと見立てたタイトル。探偵役はシリーズキャラの風水火那子である。全編通して警備員・檜山の一人称で語られ、舞台もほぼビル内。

地味になりそうな展開を盛り上げるのはビル内の癖のあるテナントたち。消えた女が属していた保険会社、興信所、銀行の分室、果ては新興宗教の道場まである。なんか怪しい人々がなんか隠して過ごしていて、そのなんかが明らかになってみると全然消えた女と関係ない…けど手がかりが増える、という展開で、それはまさにアミダクジの外れを一本一本引いているかのよう。

外れを一本引くたびに仮説がひとつ消えふたつ消え、すると最後に「当たり」の解答のみが残るという、これはまさしく本格パズラーの構図。ちょっと真相はズルーい、って感じもあるのですが、アミダクジの行ったり来たりが楽しい一冊でした。