1月 122008
本業は翻訳家の人なんですが、これが笑気と寒気を併せ持つ妄想エッセイ。
屋根の上でまといを振るっている江戸っ子は火事にはしゃいでいるんじゃないか、用途がない「男性の乳首」が未だ存在しているのは自分のせいではないか、ロボコップには髭が生えるのか、満員電車で会うキテレツな人たちは自分にしか見えないのか…。
どうでもいいことでもいったん気になると止まらない。これが半ばマジメな口調で語られていくからたまらない。眠れぬ夜に一人でしりとりを始めるが、ルールの策定に明け暮れて終わったりする。可笑しくてしょうがない。
この「気になる」が爆発してるのが3章の「軽い妄想壁」で、ショートショートの形式で妄想が綴られているのだけど、これが飛びすぎていて逆に怖い。サーカスから追われたり口の中で蛙を飼っていたりである。もはやホラーに近く、これまで笑っていたのに段々と悪寒を覚えるほど。
最後の4章「翻訳家の生活と意見」で普通に戻り、翻訳家の苦労話などが語られていても、3章の衝撃が覚めやらず、この人はホントは翻訳家じゃなくて、そう思い込んでいるだけなんではないか、といらぬ心配をしてしまうぐらいでした。
くすくす笑っているうちに現実と虚実がぐちゃぐちゃになる本作。これが作者の初エッセイで、近刊の『ねにもつタイプ』はテレビでも話題になってました(表紙見て思い出した)。恐る恐る読んでみようと思います。
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