まさに落語ミステリの”真打ち登場”。帯の文句に偽りなし。
高座の最中に血染めのナイフがあらわれる、後輩は殺人の疑いをかけられる、妻の知り合いは詐欺容疑……。次から次へと起こる騒動に、二つ目、寿笑亭福の助が巻き込まれながらも大活躍! 落語を演じて謎を解く、一挙両得の本格落語ミステリー!
これまで落語ミステリと言えば大倉崇浩『七度狐』や田中啓文『笑酔亭梅寿謎解噺』など数あれど、本作が新しいのは、落語を演じることイコール事件の解決になること。
3編ともクライマックスは舞台にあがる福の助の落語。福の助が従来の古典落語に新しい演出を加えるのだけど、この演出そのものが謎の真相を示唆することになるのである。この「新しい演出」=「謎解き」の絵がすばらしい。
落語のアイデアを思いつくだけでなく、それを事件と結びつけるプロットを作るなんてたいそう難しかろうに、3編ともクオリティが落ちないのもスゴイ。
粋な登場人物や名人のエピソードなど、作者の落語に対する愛もひしひしと伝わる筆致。しゃべりの果てにある美しき一石二鳥。また続編が楽しみなシリーズが一つ増えました。
なんだか落語が聞きたいなぁと思ってたら、作家9名が新作落語を書き下ろした『ハナシをノベル!! 花見の巻』がつい最近出たらしく、すごい気になる。実演CD付きですって。我孫子武丸、浅暮三文、田中啓文、牧野修などなど。