道尾秀介『ソロモンの犬』

もう、この作者には毎回してやられる。

夏。大学生4人の目の前で、教授の息子が交通事故にあう。突然走り出した飼い犬に引きずられて道路に飛び出してしまったのだ。従順だった飼い犬のあまりに不自然な動き、事故か?故意か?事件をきっかけに、4人の関係にも変化が現れ始める。

主人公が仲間の一人に片思いをしているわけなんですが、まぁーこれがドモるキョドるで大変なアワアワぶり。この人が語り手で大丈夫なのかと序盤こそ不安だったけども、もうこの主人公だからこその物語なんですわ。

終盤のひっくり返し、犬の習性を利用した謎解き、仲間の不和の真相など、本来ならそれぞれあまり関係ないバラバラの要素が、この主人公のキャラによって繋がって、ひとつの青春ものとして形になっているんだよなぁ。あのどんでん返しはすっかり油断していたので不覚にも声を出して驚いてしまった。

本格ミステリってわけでも恋愛ものってわけでもなく、どこのジャンルにいれてもちょっとはみ出る面白さの本作。青春なんてはみ出てなんぼ、ということか。