9月 222007
「君はミステリに何を期待しているんだ?」
全ての書物が灰にされた世界。旅を続ける英国人少年のクリスは、日本の小さな町で奇怪な事件に遭遇する。町の家々に残された謎の赤い十字架。森の湖で見つかる首無し死体。この町では森に入ると化物に首を切られると恐れられていた。その存在の名は、「探偵」。
書物が燃やされてしばらく経った世界なので、もちろん推理小説も存在しない。すなわち、いかにもミステリ的な事件が起きたとしても、町の人は「ミステリ」って何なのか知らないので処理しきれない。結果として、首無し死体が見ると「自然現象」として処理されてしまうのだ。父から口伝えで「ミステリ」を知っているクリスはこの壁に苦悩する。
他にも「探偵」の存在や、宝石にされたミステリのガジェット、ガジェットを取り締まる少年検閲官の存在など、数々の設定があらわれる。幻想的であり、何かの暗喩にも見えてくる。ミステリの形をしたミステリの存在を巡る寓話という感じ。
豪腕物理トリックが相変わらずブンブンうなっているが、作者のミステリに対する姿勢というか心構えというか佇まいが透けて見えてくる。「君はミステリに何を期待しているんだ?」という問いの、作者自身の答えがこの一冊なのだろう。この一冊を踏まえて次にどうでるのか、目が離せない。
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