蒼井上鷹 『出られない五人』

急逝した小説家を偲ぶ為に、彼ゆかりのバーに集まった5人の男女。バーは廃業ずみなのだけど、管理人に無理言って忍び込んでいる。宴もたけなわのころに見つかる身元不明の死体。バーは翌朝まで鍵がかけられた密室状態。そのうえ彼らにはそれぞれ「出たくない」理由があったので…。

この本格ミステリ的には”いかにも”な設定で、フーダニットでもクローズドサークルでもないというのが、これから読む方への一番の注意点であります。まぁ、ちょっと、えー、って感じでしたが…。

あくまで「偶然が重なってどんどん話が変な方向へ転がっていく」もの狙いの話し運び。章ごとに登場人物視点が変わるので、彼らの”隠し事”が徐々に明らかになっていくようになっている。バーの間取り、ガシャポンなどの小道具もフルに使ってる、なんですが…。

ドタバタ、スラップスティック、というにはどうも「理性」がはっきりしているのである。登場人物もなんとなく理屈っぽい。まさに閉鎖状況で殺人がおきた時の本格ミステリの登場人物の感じというか。ドタバタも本格もどっちも好きで、という思いが逆にどっちつかずを生んでいるような、そんな気がしました。

もうメチャクチャか、ガチガチか、もっと勢いよく振り切れちゃうともっと面白くなるのではと思いました。