三津田信三『首無の如き祟るもの』

ホラー映画とか、怪談とか、百物語とか、ホラーにからっきし弱い僕である。もう怖い話とかダメなんですよ。だって怖いんだもの。なのでホラー寄りと噂の三津田信三は読んだことがなかったのですが、本作、かなり本格ミステリ度高めということで読んでみました。あんまり怖くなかったよ。よかったよかった。

奥多摩に代々続く秘守家の「婚舎の集い」。
二十三歳になった当主の長男・長寿郎が、三人の花嫁候補のなかからひとりを選ぶ儀式である。
その儀式の最中、候補のひとりが首無し死体で発見された。
犯人は現場から消えた長寿郎なのか? 
しかし逃げた形跡はどこにも見つからない。
一族の跡目争いもからんで混乱が続くなか、そこへ第二、第三の犠牲者が、
いずれも首無し死体で見つかる。
古く伝わる淡首様の祟りなのか、
それとも十年前に井戸に打ち棄てられて死んでいた長寿郎の双子の妹の怨念なのか──。

いやもうド本格ですよ。戦前と戦後におきた二つの殺人事件が本作のコア。幾多の「首無し死体」を巡り、軽く30を超える謎が、”たった一つの事実”を元にどんどんひっくり返っていく様子は圧巻。複雑な作りなのにちょっとの糸口でスルスルほどけるのがスゴイ。

この話、事件を担当した駐在の奥さん(小説家)が当時を振り返りながら書いた小説、という形をとっている。未解決事件を再度まとめることで全体像をつかみたい、という狙いで書かれてるんですが、この全体を覆う枠も効果をあげているのです。読んでる最中は読みづらかったり乗れなかったりした部分(特に解決のあたり)もあったんだけど、あとから考えるとあーこの「作中作」構成にやられてるのか、と思い当たる節あり。つくづく良くできてる。

直球本格なので、その辺りのコードを心得てる人ほどこの作品はオススメ。これは今年のベスト入るなぁ。

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