若竹七海『猫島ハウスの騒動』

人間30人:猫100匹が住む通称・猫島。民宿や土産物屋が軒を連ねる猫島は、稼ぎ時の夏を迎えて海水浴客と猫好き客相手に大忙し。ある日、入り江でナイフが刺さった猫の剥製が見つかる。その三日後、島周辺を暴走中のマリンバイクの上に人間が振って来てぶつかる、という事件が発生。折りしもその頃警察では、猫の剥製から覚せい剤反応が見つかっていて…

まずなんと言っても登場人物の多さと個性の強さ。民宿を切り盛りする女子高生、島の中心的存在の神社の宮司、寝てばかりの宮司の孫、元銀行マンの海の家オーナー、後ろ暗い過去のある保養所管理人、猫アレルギーの刑事、サボり性の派出所警官、民宿を1人で改装中のイラストレーター、派出所勤務のポリス猫などなどなど、みんな事件が起きようとも、それぞれが自分のことで頭がいっぱい。この書き分けはさすが若竹七海。

一癖も二癖もある登場人物が揃いもそろって島の上でぎゅうぎゅうで、狭い範囲で人や事件の動線がごちゃごちゃと入り乱れるわ、過去に起きた三億円強奪事件や神社の秘密まで絡んでくるわで、拡大する騒動ぶりが面白い。あとであれはこういうことだったのか、という伏線も要所要所にあり、ミステリ的にも楽しく読めました。クローズドサークルというわけでなく、別に本土と行き来できるので、「陸続きの孤島もの」といったところか。